何のためのヒューマノイドロボット

2012-02-09 06:52

まんがサイエンスという子供向け科学漫画シリーズがある。その8巻はまるまる一冊ロボットに当てられている。



そのなかで繰り返し問われるのは「なぜヒューマノイド型ロボットか?工場で働いているようなロボットでいいのではないか?」という問題だ。

この漫画サイエンスというのは実に真面目に作られており、作者はこの問題に容易な答えをだしはしない。

「ヒューマノイド型なら、人間が生活している空間を変えることなくそのまま使えるから」

が一応の結論だったように思う。しかしこれは嘘だ。ルンバは御世辞にもヒューマノイド型とは言えないが、ちゃんと普通の家庭で役にたっている(うちの実家でも働いている)

つまるところ、ヒューマノイド型ロボットが必要だと誰にも理論たてて証明することはできない。しかしなぜ日本の研究機関はヒューマノイド型ロボットをつくりつづけるのか?

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一年前にこんな文章を書いても「何のことだ」と思われるだけだったと思う。しかし福島原発の事故で活躍したのはロボット大国日本のロボットではなかった。それらは何の役にもたたなかった。

 日本は「ロボット大国」や「ロボット王国」などと呼ばれることが多い。「日本のロボット技術は世界一」だと信じていた人もたくさんいるだろう。ところが、2011年3月11日に発生した東日本大震災によって引き起こされた東京電力・福島第一原子力発電所の放射能漏れ事故では、最初に投入されたのは米国製の「PackBot(パックボット)」であった。「なぜ日本のロボットが使われないんだ」という失望の声も多く聞いた。

via: 再検証「ロボット大国・日本」(1):日本は本当に「ロボット大国」なのか (2/2) - @IT MONOist

日本のロボットは相変わらず研究室の庭で惰眠をむさぼっている。現場ではiRobot社のロボットが大活躍しているというのに。

そもそもなぜヒューマノイド型ロボットなのか?何十年も税金を食いつぶしてきたあげく役にたたないそれらに何の意味があるのか?今ロボットに関わる人間にはこうした疑問がつきつけられている。

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と思っていたがもちろんそんなことはないようだ。(ここからようやく本論にはいる)

先日情報処理学会音楽情報科学研究会が行われた。私も参加予定だったのだが、インフルエンザのおかげでキャンセルだ。しくしく。

しかし研究会の模様がUstream,ニコニコ生放送で放映されるというではないか。之は見なくては。

とうわけで見だしたのが"VocaWatcher: 人間の歌唱時の表情を真似るヒューマノイドロボットの顔動作生成システム"である。産総研の誇るヒューマノイドロボットが、声だけでなく、歌唱時の表情まで真似してくれるのだそうな。

説明は進み、スライドの6枚目「歌うロボットの意義」というタイトル。をを、是非ここは聞きたい。

と身を乗り出せば、一番目に挙げられた意義は

「ヒューマノイドロボットを使うと目立つから」
(以下スライドより引用)
人々の関心を惹き付けやすい
• 我々の展示経験(CEATEC2010、産総研オープンラボなど)
• アイドルロボット構想(経済産業省「技術戦略マップ2010」)

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正直言ってこの言葉を聞いた後は聴く気がなくなった。
「わー、このロボット人間みたいだ。すごいなー」と人が群がり、それに気を良くして

「今度は走ることができます」

とか

「人間と協調して荷物を運べます」

とか何十年もやってきた挙句、何の役にもたたないロボットばかり創りだしたのが我が国のヒューマノイドロボットの歴史だ。

それを多大な苦痛と共に目のあたりにした今、

「ヒューマノイドロボットを使うと目立つから?」
エンターテイメント分野の応用?そんな話はもう何十年も聞いている。

正直この志の低さにはがっかりした。もちろんこの発表をしたのは一流の「研究屋」だろう。発表の技術レベルの高さ、研究者とのしての実績、私のようなチンピラが文句をつけることなどおこがましい。彼らは人の興味を集め、国あるいは企業から研究予算を取ることにとても長けているのだろう。

こうした

「研究のための研究」

について知ることは、自分がどのように研究というものに取り組むべきか考えるきっかけともなる。そうした物に嫌悪感を感じるのなら、自分はどうするかについて考えるべきなのだ。