あたりまえのプロジェクトマネージメント
2012-02-15 06:56
一見当たり前であり、実用的なプロジェクトマネージメント方法なのだが。ピクサーでMr.インクレディブルを製作したときの話。
そこで制作チームはこのハイテクのジレンマにローテクで対処することにした。棒つきキャンディはそれぞれの作業の工数を表す。バードがある特定のキャラクターあるいは特定のシーン(たとえば「ミスターインクレディブルのスーパーヒーローの衣装)にもっと時間が必要だと訴えると、別の作業(たとえばバイオレットの髪)の棒つきキャンディーが減らされる。このばかばかしいほどシンプルなツールのおかげで、コンピュータを駆使して世界最高レベルの映画を製作する面々は時間の感覚を失わず、完成の期限を破らずにすんでいる。マーベリックカンパニー p294
何かを追加するのなら、何かを削らなくてはならない。実に当たり前のことだが、会社でこれがまともに認められることはめったに無い。だいたいが
「がんばれ」
でおしまいだ。結果製作する面々はうつ病になり、完成期限は守られず、製品の質は下がる。
しかしこのマネージメント方法が働くためにはいくつかの「当たり前かつ非常に難しい要素」が必要だ。
- 仕事量について、ある程度正確な見通しを持つ能力が監督及び製作者双方に備わっている
- 政治的かけひき、嘘などを排除して現実に何が起こるかについて率直なコミュニケーションが取れる。
- 「根性論」抜きにトレードオフという概念を理解できるほど管理者に知性がある。
こう書いてくるとなんだか悲しくなる。今までいろいろな会社でいろいろな仕事をしたが、ほとんどアウトだな。今後私がマネージメントの立場につくかどうかわからないが、もし就いたとしたらこの言葉を覚えておこう。
もう一箇所引用。
人材活用の巨匠、ジョン・サリバンはいかにも彼らしくポイントをずばりと指摘する。「いいですか、スターはバカ者のためには働きません。ですからより高いレベルの才能を獲得するには、受け入れる側のマネジメントのレベルも高くする必要があるのです」マーベリックカンパニー p279
人材獲得競争は不況だからこそ苛烈だが、このことに気がついている会社は滅多にない。というか気がついてもなんともならない、ということなのかもしれないが。