リーダーの姿
2012-06-05 07:00
E3での発表を前に、任天堂の岩田社長がスピーチを行った(オンラインで)
収録されたのは、任天堂の会議室。壁にかけられているのは「独創」という文字。彼が述べたのはE3で「詳細」を発表する予定のWiiUのコンセプト。しかし私が今日書きたいのはそのことではない。
このスピーチを見てゲームに関心を寄せる人はあるいはこうした感想を抱くようだ。
詳細は動画を見ていただくとして、個人的にポイントだなと思ったのはオンライン機能の本格強化、それにともなうソーシャル機能の組み込み、そしてスマートフォン対応あたりでしょうか。
via: 本格的にオンライン対応してきたWii Uが一気に期待モード - カイ士伝
しかし私はゲームをほとんどしない人である。(むしろ任天堂の原点である花札のほうに関心が強いかもしれない)それ故別の感想を持つ。
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このプレゼンの冒頭、岩田社長はこう主張する
「今、家庭のリビングルームでは、各自が勝手な事をしている。空間を共にしているが、心はばらばらだ」
任天堂は6月6日午前1時より、E3で行うプレゼンテーションを予定しているが、今回のニンテンドー ダイレクトはその予習にあたる。岩田社長はまずリビングで一緒に居ても、それぞれが別のことをしているという"Alone Together"について紹介し、その問題を解決できるデバイスこそWii Uのコントローラだと切りだした。
via: E3直前のニンテンドーダイレクトで何が語られたか Wii Uの機能面が紐解かれる - ITmedia ガジェット
そして
「Wii Uは、私達にも責任の一端があるAlone togetherへの理想的な解決策になると信じています」
と述べる。
更には、ゲームを通じて、友達、家族、そして同じゲームをプレーする世界中の人達とつながるWii Universeを構築するための第一歩である、と。
また今は任天堂製品に閉じているユーザのつながりは、「今後」スマートフォンなどにも広がっていく、と予告している。
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正直に書こう。現時点で「ネタバレ防止をどうするのか。お題目は上がったが詳細はどこだ」とか「日本の会社に、本当に使い勝手のよいソーシャルネット機能が作れるだろうか」とか「今のWiiの"コンテンツまでの距離"問題は解消されるのか」とか不安な要素はいくつもある。
しかしこれは
Smartphone,あるいはその上で動く「ソーシャルゲーム」の脅威にさらされつつある任天堂からの
「ゲームを軸としたソーシャルネットワーク」
の提案だ。
その問題をしっかり認識した上で、任天堂は何をすべきか、そうしたことを徹底的に議論し、自信をもって提案をする。
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会社のトップが、その新製品について
「どのようなコンセプトで、どんなことを考え作ったのか」
自らの言葉で力強く語る。このプレゼンのなかで(当然のことだが)岩田社長は
「CPUがどうで、グラフィックスがどうで」
などとは一言も述べない。自分たちがWii Uについて磨き上げたコンセプトを自信とともに我々に訴えてくる。
こういうことができる企業トップはそう多くない。おそらく誰もが故スティーブ・ジョブズを思い出すだろう。ソニーのストリンガーはWalkmanを上下逆さまにもってカメラに収まった。次の平井氏は
「リィッジレーサー!」
と叫んだが、その言葉は
「凡庸なセールスマン」
としてのそれだった。
今回のプレゼンが任天堂の会議室で収録されていることに、そして「独創」という文字を背景に行われた事に注目すべきだ。
これは危機に瀕した企業のリーダーがとるべき一つの方向を示していると思う。原点に立ち返り、自分達が会社として存在しているのはなぜなのか、それを考えぬいた結論だ。
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と褒めたところで、なんですが、この動画をブログに埋め込めるようにしてもらえませんかねえ。ここでクリックしただけで再生されるようにしたいのですけど。
こういう「細かい」ところがなあ、ちょっと不安なのだけど。