白昼夢から覚めるとき
2012-06-21 06:54
一端始めるとなかなかやめないのは日本企業の特質である。それは企業が好調の時は美徳と云われ、不調の時は欠点と言われる。
しかし
先日のMicrosoft Surfaceの発表で確かになったことが一つある。
「日本製PCはジャパネットたかたのみで販売するニッチ商品とすべきだ」
日本メーカのPCというものは遠い昔に死んでいたのだ。ただそれに気が付かないふりをしていただけ。Microsoft Surfaceはそのことを明白にした。なぜそう考えるか。
しかも、国内版の液晶一体型は、インスタントTVなどの機能を搭載することで、実用的なTVとしてのユーザー体験を提供している。これはAppleのiMacでも体験できないユーザー体験だ。
via: 【笠原一輝のユビキタス情報局】 Microsoft「Surface」がPCメーカーに与えた衝撃
だが、日本のメーカーはプリインストールするアプリケーションで差別化し、メーカーによっては自社でアプリケーションを制作し、それによる差別化すら行なってきた。それがMetro Appsではできなくなるというのだから、大きな問題なのだ。
via: 【笠原一輝のユビキタス情報局】 Microsoft「Surface」がPCメーカーに与えた衝撃
「液晶一体型をはやらせたのが日本メーカー」とかいう滑稽無糖な主張にツッコミたくなるのをぐっとこらえよう。主眼はそこではない。ここで言っていることは
「日本のメーカーがPCに与えた付加価値は、TVが見られることであり、ゴミのようなプリインストールアプリを山ほど詰め込むこと」
ということである。それができなくなるから、Windows 8,とか最近のMicrosoftはけしからん、と本気で言っているようだ。
何の統計データもなしに言うが、今時
「こんなに無料ソフトがついてます!」
とか
「なんとTVが見られるんです!」
なんていう売り文句でPCを買う人は、ジャパネットたかたを見ている人くらいしかいないのではないか?そうした人なら海外メーカーのPCとの価格差がどれだけあろうと、日本製の高いものを買うに違いない。
今回Micorsoftは、Windowsを搭載するタブレット、それにLow-endのPCを自ら製造することで、そうした製品を作ろうとしてきたメーカーに死刑宣告を下した。しかしそれはどちらかといえば
「安楽死の宣告」
あるいは
「人工呼吸器を取り外す宣告」
に近い。白昼夢に浸っているのはやめて、現実を見なさい、と言っただけのことだ。この点において、私は以下の意見に全く賛同する。
マイクロソフトはアップルとの戦いをOEMメーカーと一緒にではなく、単独で戦うことを決めた(結果として、日本メーカーのパソコン・ビジネスからの撤退は加速されるだろう) ポストPC時代のマイクロソフトのビジネスモデルは、ソフトウェア・ライセンス・ビジネスではなく、垂直統合ビジネスになる。ソフトウェア+ハードウェアだけでなく、サービスもからめたビジネスだ マイクロソフトは、Surface が従来型のパソコン市場の終焉を早めるだろうことは十分認識しているが、そのリスクを負わなければ次の時代の覇者にはなれないことも良く知っている via: Life is beautiful
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さて、そのSurfaceだが今のところ好評のようだ。もっとも価格も、カバーキーボードの使いごこちも、画面拡大縮小の速度も何もわからない状態での評価だが。
最後に画面、これに関しては意外な発見があった。たしかにHDの画面ではあるが、タッチインタフェイスで写真のズームイン/アウトができないのだ。だから、その描画スピードもご報告できない。
via: Microsoft Surfaceにさわってみた, 独特のこだわりで超力作になってる
Windows Phoneが登場した時も概ねこんな評判だった気がする。しかし今やそれは
Death by thousands cut
と言われる状態だ。更に(前から噂されていたことだが)今までにWindows phoneを買った人に残念なお知らせ。
最初のWindows Phone 7端末が米国で発売されたのは2010年末。日本でいえば、今のところ国内唯一のWP7.5端末 au IS12Tは昨年8月末発売。WP8のリリースは秋とされているため、発売から約1年で最新OSは非対応になったことを「切り捨て」と感じるか、WP7.8が提供されて良かったと考えるかは複雑なところです。
via: Windows Phone 7.8 発表、WP8新機能の一部を旧端末に提供 - Engadget Japanese
まあAndroidよりまし、という意見もあろう。この点に関してMicrosoftを責めるのは気の毒だと思う。