ものづくり大国の幻想(何度目かな)
2012-06-22 06:43
というわけで、まずは先日発表されたMicrosoft Surfaceのプレゼンテーションのビデオを見よう。
まず最初。Steve Balmerが登場し、なぜMicorsoftがハードウェアを作るのか、という点について長々と述べる。
13:40秒頃:開発責任者がこう言う。
・Internet Explorerをたちあげて。ほらこんなにスムーズにブラウズできるんだ。
(そう言いながら、画面をタップするが画面はフリーズしている)
画面を聴衆から隠しながら、あれこれ操作をする。その間説明は進んでいく。
ゲームもできる。映画のエンタメもできる。
(画面を叩き続けるが、反応しない。しかたなくバックアップに切り替える)
この人は最初から少しナーバスに見えたが、こういう状況ではナーバスにならざるを得ないんだろうな。
来週Googleが彼らのタブレットを発表すると言われている。Microsoftはなんとしてもその前にSurfaceを発表する必要があったのだろう。事情はくんでやらなくては。
・28:40秒頃:3人並んで「これがSurface ファミリーだ」と紹介する。このプレゼンの中で何度かわざとらしい
「観客からの歓声」
があがるのだが、あれは誰がやってるんだろうね。良い製品だと思うが、例えばiPhoneを最初に発表した時のような歓声があがるとはとても思えない。そういえば、日本でXboxを最初に売りだした時も
「ハイデフ、ハイデフ」
とかいうわざとらしい声が上がっていたな。
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という点は除き、本日言いたいのはそのことではない。私が注目したいのは、特にこの29分以降、ステージにあがってプレゼンする男のスタイルだ。名前はPanos Panay
にこりともしない男で、一箇所だけ冗談を言う。「私にのってこのカバーキーボードは2番目に大切なモノだ。一番は奥さん。これは2番目」
しかしそれ以外は冷静に、Surfaceをいかに作り上げたかについて語り続ける。そこからは彼がこのハードウェアにこめた情熱が伺える。本体と一体化したスタンドについて語るところなんか実に熱いよ。
でもってNECが数日前に発表したこれと比べてみよう。
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Windows 8にとって、タブレット対応は目玉の一つである。しかしそれをどうやって普及させるか?
「ハードウェアベンダーさんがんばって」
では結局このNECのようなゴミを出してくるだけだ。AppleはそれをMotorolaが作った「iTunes対応ケータイ」で身にしみて理解したのだろう。
iPhoneの発表プレゼンで、Steve JobsはAlay Kayの言葉を引用した。
「People who are really serious about software should make their own hardware.」 「ソフトウェアに対して本当に真剣な人は、独自のハードウェアを作るべきだ。」 via: アラン・ケイ - Wikipedia
そしてこのSurfaceを見ていると、その言葉が思い出されるのだ。カバー一体型のキーボード。本体と一体になったスタンド。これらの「ハードウェアへのこだわり」をなぜ名だたる家電メーカーは作り得なかったのか。
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日本は「ものづくり大国」だという。しかし仮にその言葉が真実だとしても
「請負ものづくり大国」
とか
「部品ものづくり大国」
でしかない。Appleのような異常な企業を引き合いにださなくても、ハードウェア素人であるはずのMicrosoftがだしてきたタブレットに、日本の家電メーカーが作ったタブレットが負けているように見えるのはどういうことか。
「いやいや、NECのタブレットのほうが薄くて軽いよ」
とか言っているうちは「請負大国」「部品大国」にしかなれん。というかもうそれすら難しいのかも知れない。
アラン・ケイがどのような意図で、先ほど引用した言葉を残したのか是非知りたいと思う。