no-excuses hardware execution
2012-07-02 07:00
これはNexus-Qの記事から引用した言葉だ。家電を作っている人たちは、この言葉の意味を噛み締める必要があると思う。
クリステンセン教授の説によれば、新しい分野の製品では、当初垂直統合型のモデルが有利になる。しかしそれが成熟していくにつれ、水平統合になる、ということになっている。仮にそのモデルが正しいとすれば、間違い無く携帯情報端末は垂直統合型が有利な時期にある。
その具体例を、なぜMicrosoftがSurfaceを自前で作る決心をしたのか、についての記事から。
Microsoft learned through industry sources that Apple had bought large quantities of high-quality aluminum from a mine in Australia to create the distinctive cases for the iPad,
via: With Tablet, Microsoft Takes Aim at Hardware Missteps - NYTimes.com
-マイクロソフトは、AppleがiPadを製造するために高品質のアルミニウムをオーストラリアの鉱山から大量に購入したことを知った。
The executives were stunned by how deeply Apple was willing to reach into the global supply chain to secure innovative materials for the iPad and, once it did, to corner the market on those supplies. Microsoft's executives worried that Windows PC makers were not making the same kinds of bets
via: With Tablet, Microsoft Takes Aim at Hardware Missteps - NYTimes.com
-マイクロソフトの幹部は、Appleが革新的なiPadという製品を作るため世界的なサプライチェーンに深く関与したことを知って驚嘆した。そしてPCメーカーに同じようなことができるだろう、かと憂慮した。
それから、記事は(今や誰も覚えていない)iPadに先駆けてMicrosoftがアナウンスしたHP Slate 500についての内容に移る。
HPのタブレット登場までにはいろいろ紆余曲折があった。CES終了直後に同社ではタブレットデバイスの動作動画を一般公開し、iPad発売日に先駆ける形でスペックの一部や戦略についての幹部へのインタビュー動画を公開している。だが肝心の発売日や価格については長らく伏せられたままで、さらには3つあったタブレット製品の計画が1つを除いてキャンセルされ、webOSタブレットに一本化されるという話題が伝わっていた。
via: 米HP、ついにWindows 7タブレット「HP Slate 500」を発売 - 価格は800ドル | パソコン | マイナビニュース
その記事を勝手に要約すると次のようになる。
While its early visual designs impressed many people within the two companies, the product was "completely ruined" as H.P.'s manufacturing organization began to procure the parts they believed would be sufficient to power the device, the former Microsoft employee said.
via: With Tablet, Microsoft Takes Aim at Hardware Missteps - NYTimes.com
-初期のデザインは、Microsoft,H.P,両社にとって印象的なものだった。しかしHPが実際に製品化の作業にとりかかると、それは「完全に無茶苦茶になった」
上記記事の2P目を読むと、Slate500の「不出来」に関して両社がお互いを非難した様が記述されている。曰く、アイコンが小さすぎるしタッチの精度が悪いのに改善しようとしない、曰くタブレットは厚すぎ、CPUは熱すぎる。
つまるところ、お互いた到達した結論というのは
「ハードとソフトを一社で作らなくてはダメ」
というものだった。それ故、HPはPalmを買収したが結局PCビジネスから手をひくことを(一旦は)決断した。
もう一方のMicrosoftは?それが今回のSurfaceにつながっていると。
おそらくはGoogleも同じ結論に達して
アンディー・ルービン氏がAllThingsDに話していたところによると、グーグルでは原価(儲けゼロ)、マーケティング経費などの持ち出し分を含めれば赤字覚悟で売っていくのだそうだ
via: 【動画】グーグル「Nexus 7」はこう動く - The VergeとEngadgetのレビューから - WirelessWire News(ワイヤレスワイヤーニュース)
ということなのだそうな。つまり今はやれハードがどうだ、いやそれはソフトの問題だ、などと会社間でやっている場合ではない。No-Excusesで製品を作らなければならない、ということなのだろう。
GoogleはGoogleで「ものづくり」に徹底していて、Nexus-Qは全てアメリカ国内で製造されているとのこと。理由は
"Being able to have every engineer go to the factory if needed is incredibly valuable,"
via: It's a Sphere! The Inside Story of Nexus Q, Google's Music Hardware Gamble | Gadget Lab | Wired.com
-エンジニアが必要なときいつでも工場の現場に行けることは、とても重要だ
なのだそうな。これが「現実を知らない金持ちの戯言」なのか「ものづくりの基本に根ざした正しい態度」なのかはもう少し時間がたたないとわからない。