UICollectionViewにみる彼我の実力差

2012-09-25 07:02

今日の内容は、iOSでプログラムする人以外には何のことかさっぱり、という点を予めお詫びしておきます。

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何かと話題のiOS6がリリースされた。私にとっては、それにより6月のWWDCでは発表されていたものの、秘密保持契約の関係上知ることができなかったiOS6の機能を知ることができた、という点でインパクトがあった。

一番驚いたのは、UICollectionViewだ。なんだそれは?と問われれば

「画面上に縦横に写真とかを並べるのが簡単になる仕掛け」

と答えよう。ネットで見ることができるUICollectionView紹介ビデオを見ながらいろんなことを考える。

今、リスト表示に使われているUITableViewの拡張、という形になってはいるが違う要素がいくつか含まれている。簡潔でデフォルトのままでも十分な機能があるが、拡張するのも容易。

果たしてこのような「設計」ができるエンジニアが何人いるのだろうか。もちろん日本で「組み込みUI」に携わっているエンジニアは何千人(あるいは何百人か?)と存在するだろう。しかしその現場では

「とにかく期日前に動かせ」

とその場凌ぎの対応をし続けている。それでなんとか日常は回るのだが、積み重ねというものがない。これを書くのは何度目かだが、カーナビメーカー各社が注ぎ込んだ「人月」の工数はAppleがiOSを開発するのに費やしたものと遜色ないと思う。

しかしその出来は「旧石器時代と21世紀文明」くらいの差がある。何が違うか?積み重ねがないのだ。いくら工数を費やしても進歩がない。いくら費用を注ぎ込んでも旧石器から進歩しない。UICollectionViewを生み出すことはありえないのだ。賽の河原で石を積んでいるに等しい。

日本のカーナビメーカーには優秀な学生がたくさん就職する。そして何をするかと言えば、自動車メーカー主催の会議に出席し、議事録をとっている。プログラムを設計する(動くかどうかは別として、フローチャートを書く)のはその子会社のエンジニア。実際に実機上でコードと向かい合っているのは、さらにその子会社のエンジニアだ。

Appleのエンジニアが、説明の後に

「来年、この場所で皆さんがUICollectionViewを使ってどんなすごいUIを作るか楽しみでしかたがない」

と何度も言う。その言葉には心がこもっている。

こうした現実を目の当たりにして、溜息を付くのは若者の特権だと思う。年寄りにため息はこたえるので、何か前に進む方法を考えなくてはならない。