問題解決ではなく、問題発見

2012-11-29 06:53

これも何度か書いたこと。

AppleのIveの言葉だ。

何かを使っていてイラッとして、それで問題に気づくこともあります。これはとても現実的なアプローチで、一番簡単です。
難しいのは、新しいチャンスを発見しようとするときです。それこそ本当にデザイナーの能力が発揮されるときです。既知の問題への対処ではなくて、誰も必要性を感じたことのないものを作り出すべく「もしこれをこうしたら、便利だろうか?」って自問し始めるんです。

via: アップルのデザインの進め方、責任者ジョナサン・アイヴが語る : ギズモード・ジャパン

IveとかAppleにとって重要なのは、問題解決能力+問題発見能力ということ。

でもって問題発見能力を持っている人にとって、この世は実に住みにくい。つまるところ誰もが特に不満を持っていない状況に対して

「いや、これはもっと素晴らしいことができる」

と問題を発見する。ということは問題を発見した人だけが不満を感じ始めるということでもある。周りからみれば

「こいつは頭がおかしいのではないか。何を文句を言っているんだ」

というところか。

日本で飛行機を作ろうとした二宮忠八は「飛行機を作りたい」と提案した。しかしそれはどのような扱いを受けたか。

日清戦争時に衛生卒として赴いた忠八は、戦場での「飛行器」の有効性について考え、有人の「玉虫型飛行器」の開発を上司である参謀の長岡外史大佐と大島義昌旅団長に上申したが、却下された。長岡は「戦時中である」という理由であった。また大島には戦地の病気で帰国し、戦争が終わった頃に尋ねてみたところ、「本当に空を飛んだら聞いてもよい」という返答が帰ってきた。

via: 二宮忠八 - Wikipedia

彼には「空を飛べないことの問題」が見えていた。しかし他の人には見えていなかった。彼としては「なぜこの問題に気が付かないのか」とフラストレーションを感じただろうが、周りの人はそんなことを問題と思わず平和に暮らしていたのだろう。

結局かれは自分でやるしか無いと思いサラリーマンとして成功し資金を貯める。ここが私のようなチンピラと違うところだ。

とかやっているうちに、ライト兄弟は先を越し、初飛行を成功させてしまった。残ったのは忠八のフラストレーションだけ。「問題発見者」がたどる運命の多くはこんなものだ。

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いやいや、状況はそんなに悪くない。仮に忠八が今生きていたとすれば、自分で資金を貯める代わりにベンチャー企業を作って出資者を募っただろう。

仮に資金調達に成功すれば、おそらくもっと早く「失敗」できたと思う。であれば少なくとも「先をこされた」という悔いだけは残らなかったのではないか(私は飛行神社に行ったことがあり、そこで忠八の書いた記録を観た。私の考えでは彼の飛行機は決して飛ばなかったと思う)

であれば、歴史的にみれば今は「問題発見者」にとって良い時代ということになる。

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この「問題発見」と「与えられた問題を解く」という力は全く別個のものだし、個人の適性も異なる。世の中はあまりこの差異について考えないようだ。

さらには、ほとんどの企業は「問題発見者」を必要としていない。というか排除する傾向にある。そりゃそうだよね。みんな仲良く平和に(心の底に不満を感じているとしても)やっているところに突然

「これは問題だ」

と言い出すんだから。
もちろんただの不満屋という可能性のほうが高いのだが、そうでない場合もある。しかし「あいつは文句ばかり言っている」と排除しておいたほうが組織は安定する。

といったところで唐突に終わるのであった。