WISS2012に行ってきたよ(その3)

2012-12-12 07:12

とうわけで、まだまだこの話題である。いや、北朝鮮のミサイル発射準備とか、日本の選挙とか語るべきことは多いのだ。しかしまあ、なんだ。とにかく二日目、三日目に聞いた話から。

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と書きたいのだが、二日目は自分の発表があったため緊張とあれこれでほとんど頭に残っておあらず、三日目は「わーい。発表おわーったー」と喜びのあまりあまり聞いちゃいない。というわけで、内容がカスカスだけと許してね。

冠動脈シェーマに基づいた心臓カテーテル検査所見入力のための電子カルテ・インタフェース
五十嵐 悠紀(筑波大/JSPS),五十嵐 健夫(東大/JST ERATO),原口 亮,中沢 一雄(国循)
手書きスケッチに基づくモデリング技術を用いて,心臓カテーテル検査のための効率的所見入力を可能にする電子カルテ・インタフェースの開発を行った.本システムでは,冠動脈シェーマのテンプレートに対して狭窄の部位や程度を簡便に入力することができる.効率的でわかりやすい所見入力ということだけでなく,患者への病態や治療計画などの効果的な説明ツールとしての応用が考えられる.

via: プログラム - WISS2012

いつもきっちりとした視点で、かっちりとした成果をあげる五十嵐さん(現在筑波大学、来年から明治大学)の発表。興味ぶかかったのはチャットで

「こんなことが気になるよねー」

という話題がであると、そのあと必ずそうした点に触れた説明がでること。翌日少しお話を聞いたら、自分であれこれ想定問答を考えて、説明内容を工夫しているとのこと。

当然人が気になるところにきちん、と気が付きそれに回答をする。当たり前のようだがなかなかできることではない。

医療現場というところは、非常に保守的である、、と今年一年で何度か聞いた気がする。このシステムのインタフェースについて「ラジオボタンを使うのはいかがなものか」という意見もあったが、直後に「医療の現場では一瞬を争うので、スライダーよりラジオボタン」という話がでる。聴衆納得である。それでもまだ実用化がなされていないとのこと。その壁はどこにあるのか。乗り越えるにはどうすればいいのか。

学習の敷居の低さとシステムからの離脱の容易さを両立した学習支援システムの実現に向けて
竹川 佳成(はこだて未来大),寺田 努(神戸大/JST さきがけ),塚本 昌彦(神戸大)
難度の高い技能の習得には時間と労力がかかるため,挫折する学習者は多い.これに対し,システムが学習者を補助することで,習得したい技能の難度を下げ学習意欲を維持できる学習支援システムが提案されてきた.しかし,システム補助に依存してばかりでは,システム補助がない状態で技能を表現できない.そこで本研究では,学習の敷居の低さとシステムからの離脱の容易さを両立した学習支援システムの構築をめざす.

via: プログラム - WISS2012

正直いえば、自分の発表直後で手がぶるぶる震えている状態だったので内容については詳しく覚えていない。覚えているのはチャットでいろいろな会話がなされていたのことだ。

プレゼンの冒頭、自転車の乗り方を教える方法の最終段階は「お父さんの嘘」という言葉が述べられ、笑いが起こる。「大丈夫だよ。ささえてるよ」というやつだ。それに対して、「最近はストライダーというのがはやっている」と子供を持つ人の間で会話が盛り上がる。すいません。

そもそもこうした「高度の技能を要求するユーザビリティ的にいかがまものかという機器」はなぜ存在するのか。それへの補助と離脱はどうあるべきか、など考えるべき点を多く指摘していた発表だと思う。

注視していないことを利用したマウスカーソル高速化手法
山中 祥太(明治大),栗原 一貴(産総研),宮下 芳明(明治大)
高精度な視線計測器を用いても,ユーザが注視したいオブジェクトの特定は困難である.一方で,注視していない領域は容易に判定可能であり,この領域を適切に利用することで新たなインタラクションが可能になると考えた.本稿では,注視していない領域においてカーソルの移動を高速化する手法を提案する.評価実験により,長距離の移動時には操作時間が短縮されることを確認した.

via: プログラム - WISS2012

視線を計測し、ユーザが注視しているところを検出できれば役に立つだろう、と思う人は多い。しかし現実は優しくない。簡単にいえば「それはわからない」のだ。

というわけで、注視していないところではカーソルの移動を早くし、注視している(かもしれない)領域ではゆっくりにする、という試み。話としては面白い。実際に数ヶ月自分で使っているというのも好印象なのだがその結果が

「長い間使っても特に不具合は認められなかった」

というのがつらいところだ。いや、この間久しぶりに普通のシステム使ったらいらいらする、とかさ。もちろん使って違和感を感じないのは偉大なことなのだけど、使わなくても違和感感じなければ意味ないし。

説明で、本題にはいるまではがとっても長かった。きっちり物事を進める人なのではないかなと想像する。

お風呂ディスプレイ:浴槽型没入映像体験システム:的場やすし(電通大),高橋陽一(電通大),徳井太郎(電通大),小池英樹(電通大)

via: デモ - WISS2012

これはすごい。しかけとしては比較的単純で、水面から指をだすと、それをKinectで認識し、あれこれ入力として用いるというもの。

何がすごいといって、ちゃんと面白いアプリとセットで提案されているところだ。水面からつきだした指からどどど、と何かが発射され、目標にあたると文字通り「水しぶき」があがる。いや、すばらしい。

これ是非子供向けのプールとかで実用化してもらいたい。近くのショッピングモールでは床面に映像を投影するしょぼいシステムで子供が大はしゃぎしている。あんなのであれだけ受けるんだから、これがプールにはいったら反響すごいと思うのだけど。

叩くコミュニケーションを用いたインタラクションロボット:足立麻衣子(奈良先端大),杉山治(ATR),神原誠之(奈良先端大),萩田紀博(ATR/奈良先端大)

via: デモ - WISS2012

議論をよんだ内容だが、視点の興味深さでは群を抜いていたと思う研究。一言で言えば「かわいいぬいぐるみを叩くと、スッキリと罪悪感を同時に感じる」というもの。

人間には他人を傷つけたい、そして自分がすっきりしたい、という衝動が潜んでいる。もちろん道義的に云々ということでこうした願望が表にでること許されないのだが、存在することは事実だ。

でもってこの研究である。子供にやらせたところ、ものすごーくひっぱたいていたのだそうな。実際子供はとても残酷だ。「少年兵」という近代最悪の発明の一つはこの特性を利用しているのではないかと思う。日本の陸軍に指導に来たメッケルは若者を徴兵する意義を「若者は残酷になるのが得意だ」とかなんとか言ったとかどこかで読んだ気がする。

吉田戦車の漫画に「いじめてくん」というのが出てくる。

いじめてくんは、小型の地雷であり、生き物のように動き回る。外見は人間の頭部に細い手足が生えているような姿をしている。常に何かに怯えているようなオドオドした表情で気弱な雰囲気を放っているため、周囲の者の嗜虐心を異常にあおる。周囲の人間(時に動物も含む)がその嗜虐心に負けていじめてくんに暴力を振るうと苦悶の表情と共に爆発する。

via: いじめてくん - Wikipedia

漫画の登場人物は、「いじめれば爆発する」とわかっていながら彼をいじめずにはいられない。しかし可愛いぬいぐるみを叩くと罪悪感を感ずる。何故だろう。

という着眼点が面白い研究。うまくまとめてなんらかの成果につなげて欲しいが。