インタラクション2013に行ってきたよ(その2)

2013-03-05 07:03

というわけで、インタラクション2013で見聞きしたものの感想(続き)

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熱変色性インクによる喪失感体験を提供可能なカードゲームデザイン

「紙に何か絵を書く。それを「対戦」させる。すると負けた方の絵が消える」というもの。

これは面白いとおもった。まだ萌芽段階だが、「物理的に書いた絵が消える」というのは子供に大いに受けそうだ。そうしたアプリをしっかり作ればだが。

多重赤外光源とIRコースターによる情報識別の基礎検討

今回最もインスピレーションを喚起された研究。

まず5cm角くらいの立方体についているネジをまいて机の上におく。するとそのネジで発電された電力がある間、机の別の位置の上に「何か」が表示される。立方体の下においたフィルタを変えると表示される内容が変わる、というもの。

日頃「ハードウェアの提案はアプリとワンセット」としつこく主張している私だが、これには現時点ではおもしろいアプリが付随していない。しかし想像を喚起してもらえばいいのである。

この研究の面白さは徹底的にアナログを活用しているところにある。でもって「不便益」と組み合わせて考えるわけだ。

現代において、最も貴重なものは「時間」であると考える。しかし多くの人はこのことに気がついていない。20年前夢だった「インターネット常時接続」を手に入れた途端、人間は有益なことをせず、ひたすら2chを読んだり、くだらない情報を送信しあうようになった。それは確かに「無料」かもしれないが、何よりも貴重な「時間」を浪費していることに気が付かないのだ。

このシステムはそれは気が付かせるためのトレーニングシステムとして使える。「まずネジをまかなくては光がつかない」のだ。別の言い方をすると「光がついている時間を得るためには労力を投入しなくてはならない」時間はそれだけ貴重なのだ。

例えばこんなアプリケーションはどうだろう。数人で議論する際に「光が点灯している間しか発言できない」というルールを付与するのだ。すると発言しようする人間はまず立方体を手に入れ、それでネジをまかなくてはならない。

それだけ貴重な時間であれば、発言をコンパクトにまとめ、しかも無駄口を叩かないようになるだろう。発言する前にネジをまく時間を「考える」ことに使うだろう。

スティーブンホーキングは視線キーボードを使って会話する。彼にとって発話とは実にコストがかかる貴重なものなのだ。であれば、発話には重みがあるはず。

このシステムを使えば、そうした状況を体験させることができる。例えば研究室のミーティングで、教授が鬼のような顔をしてネジを巻き始めれば、学生は「これは何かまずいことがある」と心の準備をすることができる。

教授もネジを巻いている間に、少し怒りが治まるかもしれん。いずれにせよお説教は短くまとめざるをえない。

こうしたシステムを常時使うのは現実的ではない。しかしトレーニングツールとして考えれば面白いのではなかろうか。しばらくこれを使うと「自分が普段いかに時間を浪費しているか」ということに気がつく筈だ、、とかなんとか。

説明を聞いたあとしばらくこんなことを考えていました。


例文引用をベースとした英文作成ツール

英文を作成するさいに、一つの文を表示するんじゃなくて、複数表示しておきマウスでドラッグして英文を組み立てる、というもの。

Google翻訳でいいんじゃないかといわれて答えに詰まるようでは困る。こういう発表は少なくとも「こうした場合はうまくいきます!」というチャンピョンデータを提示してほしい。(20名以上で実験しろとか言わないからさ)そうでないと議論にもならない。

視認性確認対話ベースの地下街ナビゲーションシステム

ビルの中で迷った時に、テキストだけではナビゲーションがわからん。というわけでランドマークを指定してナビゲーションを行い、かつ地図上にルートを表示するというもの。

大変実用的でよいと思うのだが、もう一歩「いま自分はどちらを向いているのか。ナビゲーションの指示と同じ方向を向いているのか」の確認機能が欲しい。これを間違えると果てしなく間違った方向に進んで行ってしまう。

写真を付与すればできることだと思う。それは大変だと思うが、ここまで作り上げたのなら是非実現してほしいと思うようなアプリだった。

ourcam: デジタル写真撮影のためのオンサイトプログラミング環境

デジタル写真のフィルタ、撮影タイミングなどを画面上で自由にプログラムできるアプリの研究。

たとえばフィルタの順番を変えるだけで、効果が変化する。撮影タイミングも流し撮りなどを設定できる。

また写真をwebで共有する際、使用したプログラムも共有されるので、それを元に変更したりとかが自由自在。

すばらしく実用的で、今ないのが不思議なくらい。しかもシステムの完成度が高い。「これは金取れますよ」と貧乏なサラリーマンは主張してしまったが、開発された方は「無料で出して普及させたい」とのこと。確かにそうだ。馬鹿な事を言ったと後で反省しきり。しかし有料でも売れるんじゃないかと思うほど効果的でおもしろいアプリだった。

airmeeting: 公共の場の空調設定を合議によって決定するシステムの提案

しかけとしては単純。スマホから「暑い、寒い」の投票を行い、それによって温度を上げたり下げたりするというものだ。

単純だがきっとこのシステムを「現実世界」で運用すればおもしろい知見が山のように得られるに違いない。そもそも温度調節にはタイムラグがあるからものすごく蛇行するとか。あるいは「寒がり」と「暑がり」の間で戦争が起きたり、あるいは人間関係がすごく悪くなるとか。

システムをつくるだけだったら東工大でもできる。IAMASがやるのであれば是非そのような「現実世界に足をつけた」知見を発見してもらいたい、と妙に力説してしまった。いや、おもしろいと思うんだけどなあ。

という話をある人にしたら「結局寒がりを窓際に、暑がりを冷房吹き出しの近くに配置するのが正解では」と言われた。確かにそうかもしれん。

また長くなったので続きは明日。