楽天テクノロジーカンファレンス2013のレポート第一弾

2013-10-30 06:39

去年は三木谷氏が基調講演を行った。英語はそれなりに上手だったが、内容は残念ながらほとんどなかった。

理由はわからないが、今年は三木谷氏が急遽キャンセル。(壁にはられた時間割りは、手描きで修正されていた)終了後のビアバッシュでは

「きっと日本シリーズで仙台に行ったんだ」

とか言われていたが、本当のところはわからん。

というわけで、急遽登板したのが「まつもとひろゆき氏」何年か前に情報処理学会HCI研究会で講演を聞いたことがある。あのときはまだRuby on Rails前だった。だからRubyは「玄人が選ぶ渋い言語」だった。

今回の講演の概要は、会社の表のブログに載せている。詳細はそちらをみてもらうとして、今日書きたいのは「エンジニアのモチベーションについて」

ひろゆき氏は、講演の最後のQ&Aでこう述べた。

Q:"失敗もOK"という風に会社のカルチャーをかえられるか?多くの会社ではなかなかそうはいかないが。

A:基本的にはそんな会社は辞めるべきだと思う。多くの大きな日本のIT企業は歯車を求めている。従業員に敬意を払っていない。エンジニアの動機の一つは自由度があることであり、自由を得るためにはリーダーになる必要がある。だから歯車を求めているような会社は辞めるべきだ。

via: 楽天テクノロジーカンファレンス2013でのMatz まつもとひろゆき氏の講演 - 株式会社ネクスト エンジニアBlog

氏の言っていることに同感する人は多かろう。しかし氏がおそらく知ってはいるが述べていない事柄がある。

自由を与えられた時に、それを活用できるエンジニアはそれほど多くない

ということだ。

私にとっては、行う仕事の自由度は実に重要だ。それは前職で実感した。会社で一緒に働く人たちは実に優秀だたった。しかしそれでも私はとても幸せではなかった。Sierという仕事は私の性に合っていない。おそらくMatz氏も同じだと思う。

先日中学の同級生と合っている時私はこう言った。

「世の中には、誰かが描いたぬりえを丁寧に塗る仕事と、自分の絵を描く仕事がある。俺は絵を描きたいんだ」

夏目漱石に「私の個人主義」という有名な講演がある。そこから引用しよう。

ああここにおれの進むべき道があった! ようやく掘り当てた! こういう感投詞を心の底から叫び出される時、あなたがたは始めて心を安んずる事ができるのでしょう。容易に打ち壊されない自信が、その叫び声とともにむくむく首を擡げて来るのではありませんか。すでにその域に達している方も多数のうちにはあるかも知れませんが、もし途中で霧か靄のために懊悩していられる方があるならば、どんな犠牲を払っても、ああここだという掘当てるところまで行ったらよろしかろうと思うのです。

via:

この言葉が、Jobsのそれとそっくりなことに気がつく人も多かろう。

たまらなく好きなことを見つけなければならない。そしてそれは仕事についても愛する人についても真実だ。仕事は人生の大きな部分を占めることになり、真に満足を得る唯一の方法は偉大な仕事だと信じることだ。そして偉大な仕事をする唯一の方法は自分がしていることをたまらなく好きになることだ。まだ見つけていないなら探し続けなさい。妥協は禁物だ。核心に触れることはすべてそうであるように、それを見つければ分かる。そして素晴らしい関係は常にそうであるように、それは年を経るにつけてどんどん良くなっていく。だから見つかるまで探し続けなさい。妥協は禁物だ。

via: スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学での卒業式スピーチ - himazu archive 2.0

ここで漱石とJobsが言っていることは、Matz氏が言っていることより一段抽象的でメタであることに気がつく必要がある。Matz氏は自分のことしか語っていない。

私やMatz氏はおそらくSierに長く勤めることはできないだろう。窒息するからだ。しかし世の中にはSierで楽しく働いている人が何万人(ひょっとすると何十万人)もいる。

何にやりがいを求めるか、別の言い方をしよう。どれだけの自由度がその人にとって満足かは実に異なる。会社に対して不満を述べ続けるが、絶対やめようとしない人間がたくさんいることを知っている。私が見たところ、その人達はどこかその会社、仕事が好きなのだと思う。さらに言い換えれば、与えられている自由度-不自由度とも言えるーがその人にとって適当なのだと思う。

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などと書いているが、これはMatz氏の言葉に触発されてでてきた言葉だ。その意味でMatz氏の基調講演は実に面白かった。来年はまた三木谷氏がしゃべるんだろうか。また楽天がパリーグを制覇し、「急遽登板」があってもいっこうにかまわないのだが。