どこまでも線を伸ばしたくなる人達について
2013-11-08 06:50
これは何度か書いたことだが、私が何を言おうと、結果がどうなろうと「線をどこまでも伸ばしたい」人たちは存在する。
家電各社は消費者が本当に4Kテレビを欲している、と考えているのだろうか。同時に4Kテレビが収益を支える"看板商品"に成長すると思っているのだろうか。
via: なぜ日本の家電企業はTVに固執するのか 4K、8K...需要あるの? (産経新聞) - Yahoo!ニュース
こうした態度を日本の家電メーカー凋落ぶりと結びつけて語ることは簡単だ。しかし世の中はもう少し複雑なようだ。
じゃあ日本の家電メーカーを蹴散らし、快進撃中のサムソンはどうなのか?
Samsungがもう一つ口を滑らしたのは、二年後の、スマートフォンのディスプレイの解像度の大幅増大だ。まず、来年はWQHD(2560 x 1440)のディスプレイを出す。そして2015年には3840 x 2106(Ultra HDとも呼ばれる)を出す。すばらしいことのように聞こえるが、でもわずか5インチの画面だ(fonbletはそれよりやや大きいか)。ぼくよりも頭の良い人(科学者で写真家のBryan Jones)がこの記事で説明しているが、平均的な人間が通常の使用距離で個々の画素を見分ける能力の限界に、すでにApple製品は到達しており、それはiPhone 4の326ppiのレティナディスプレイである。
via: ハイブリッドモバイルを支配するのは: Samsungのフォンブレット(fonblet)かそれともファブレット(phablet)か? | TechCrunch Japan
この記事を読むと、彼らの思考形態(少なくともその一部は)日本の家電メーカーと大同小異であることがわかる。
彼らは何故このようなことを続けるのか?理由を思いつくままに列挙してみよう。
・なんといっても「進歩」が定量的に示せる。「ユーザが何を欲しているか」なんて訳のわからない尺度は評価も予想もできない。だから「定量的」な改善効果を示す尺度が必要で、それには解像度がピッタリだ。
・競合他社も同じような尺度を使っている。だから弊社の製品に優位性があることを示さなくては。
・画質の改善は永遠の課題だ!
つまるところ彼らと彼女たちは「自分が、家族がユーザとして欲するか」よりも「サラリーマン(またはウーマン)としての立場」を優先して物を作っているように思える。ではなぜサムソンと日本の家電メーカーでこれほど業績に差が出るのか。おそらく話はもっと複雑なのだろう。
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例えばこんな「ビジョン」を語る人がいる。
例えば奥さんの誕生日が近づいていたとして、ショッピングモールに行った時、壁には"なぜか"『あなたのパートナーにバッグのプレゼントはいかがですか?』というお知らせと30分限定の割引クーポンが出ている。
via: 【イベントレポート】中島聡トークセッション「未来のITを考える」 - UIEvolution K.K. Staff Blog
もう少し想像力がある人だったら、ショッピングモールにはいるだけで自分の個人情報(奥様の誕生日まで知られているのだ)が公になることに恐怖を感じることだろう。この退屈で無邪気な夢を読んでいると、この人が同じ程度に無邪気な反原発論を語れる理由がわかる気がする。
というように批判することは簡単だ。しかしその「退屈で無邪気な夢」を聞こうという人の数はどうだろう。どうみても、このブログの読者よりも多い。
これは226事件の裁判を担当した人が書いていたことだが、自分の立場、物事の一面しか見ない人の言説は明快であり力強い。様々な立場を考える人の言葉はそれゆえに曖昧になりがちである。そして歴史に何度も登場したとおり、自分の立場だけを考える一面的な言説はほとんどの場合大きな支持を得る。
家電メーカーの内部で起こっていることはおそらくそういうことなのだと思う。例えそれが間違っていても、何か明快な言葉があれば、人はそれにすがろうとするものだ。ソ連を介しての調停工作のように。
こうした問題に対処するためにはどうすればいいんだろうね?今のところ答えは見つかっていない。