That's Entertainment

2014-01-02 10:42

私の意見では、米国は疑いなくEntertainment超大国である。供給する側の質と量は圧倒的だが、その観客の側も合わせるとエンターテイメントに関して米国ほど「わかっている」国はないと考えている。


昨今日本人もサッカーワールドカップに熱狂する。人々が熱狂するということは商売になる、ということだが一歩引いて考えてみよう。22人の男達がボールを蹴り、それが網に入ったとかはいらないとかが何の役に立つというのだろうか。何の役にも立ちはしない。公衆衛生を推進することにも、食物を得る事ができない人達の腹を膨らませることもできない。もっと言えば「サッカー日本代表」がワールドカップを制したところで、我々の貯金口座の額が1円たりとも増える訳ではない。

つまりスポーツ観戦というのは虚業なのである。しかし年末助け合い募金に投じるお金の何千倍の金をそのチケットを得る為に費やす人は少なくない。ではその虚業がどうすればそのように多くの金を集めることができるか。

まず第一に「フェア路線でいくのか、作り物路線でいくのか」を決めなくてはならない。前者が日本語で言うところのアメフト、後者がプロレスである。そしてもし大きく儲けようとすればどうも前者のほうがいいようだ。いずれにせよ決めたらそれを徹底しなくてはならない。プロのアメフトたるNFLではレフェリーに対して非常に厳しい公正性が求められる。NFLで最も重要な試合、スーパーボールで審判を勤めるのは例えばこんな人だ。

ジェラルド・オースティン  Gerald Austin  1941年生まれの最年長で、名審判の1人として尊敬を集めている。このほどNFL審判から引退することが発表されたばかり。スーパーボウルの主審を2回務め、パッカーズの勝った第31回スーパーボウルも彼だった。ノースカロライナ大の博士号を持ち、公立学校の運営に30年間たずさわっていた(今は引退)。アンダーソンと同じく、大学界ではカンファレンスUSAの審判コーディネーターを務めている。

via: NFL審判ってどんなひと : 2008年04月15日 - Packer Zone


「アンフェアな審判」
というのはフェア路線でいこうとするエンターテイメントの面白さを一番損なう要素である。短期的には大きな収益をもたらすことがあるが、長期的にみればマイナスだ。もちろん審判だけではなく、ルールを運用する人間が「公正」でなければ観ている方はしらけてしまう。観客は

ひいきチーム公正に戦って勝つ」

ことを望んでいる。そうしてこそまるで我が事のようにその勝利を祝うことができる。それであってこそ長期にわたり楽しさを提供する事ができる。

さて、そうした点から最も遠いところにいるのが、昨今の我が国における「プロボクシング」である。

3日に大阪で行われた亀田大毅と、リボリオ・ソリスのWBA、IBFの世界統一戦は前日にWBA王者のソリスが計量に失敗。失格となりWBAタイトルを剥奪された。前日のルールミーティングでは、大毅が敗れた場合にはIBF王座博は空位になることが確認されていた。だが、試合後、IBFの立会人が会見を行い、「負ければ空位」の前日の方針を撤回、「負けても王座は防衛。ルールではそうなっている」と発言して前代未聞の大騒動に発展していた。

via: JBCが亀田陣営に最後通告! (THE PAGE) - Yahoo!ニュース

別にこうした「ルール操作」が一概に悪いというのではない。しかしこういうことをやるならはっきりと「ボクシングは作り物のエンターテイメントです」と宣言すべきだ。

ボクシングというスポーツには、こうした「作り物」の雰囲気がつきまとっている。それ故かどうか知らないが、米国で暮らしていてもボクシングのニュースを見ることはほとんどない。ケーブルTVでPay per viewを注文すれば別だが。

ちなみに私はサッカーもこうした「作り物」の雰囲気から逃れられてはいないと思っている。

サッカーのくじ引きはガチャポンの玉のような丸いカプセルを引く。国名が書かれた紙はカプセルの中に入っているので、透けて見ることは不可能。不正の入る余地はないと思われていた。しかし今年8月にトルコの元国際審判が欧州チャンピオンズリーグにおける不正抽選の実態を告発した。
 それによるとカプセルにはバイブ機能が仕組まれており、引いてほしいカプセルを抽選者に伝えているそうだ。実際に放送された抽選会を見てみると、カプセルが微動していることが確認でき、欧州でちょっとした騒動となった。

via: ブッチNEWS - 来年のブラジルW杯、日本代表の予選突破に抽選会の闇


こうした不正は、仮にその結果がどうであれ、スポーツというエンターテイメントの面白さを削ぐものだ。しかしサッカーワールドカップという様々な国が係る競技で、そうした「公正性」を求めるのは難しいのだろう。不正であってもひいきチームの勝ちが見たい、という(私の価値観では)低俗な喜びに安住している国(我が国も含めて)は、おそらく多いに違いない。

ちなみに2002年のワールドカップで話題になった審判についてwikipediaから引用しておく。先ほどのNFLの審判と比較してもらうと、私が言いたいことがわかってもらえると思う。

2010年9月、米国ニューヨークのケネディ国際空港においてヘロインの大量所持容疑で逮捕され[7][8]、懲役30ヵ月となったが[9][10]、模範囚であったことから刑期が短縮されて2012年12月にエクアドルに送還された[11]

via: バイロン・モレノ - Wikipedia