通信用ドローンの思い出
2014-04-16 06:56
今から4半世紀前のことである。あるきっかけで「24時間滞空する無人航空機を作って無線通信の中継に使う」計画の検討を命じられた。
さてどうしよう。そもそも太陽電池の出力だけで24時間滞空できるんだろうか。というか俺飛行機の設計やったことないし。
その検討を命じた課長は「初歩の航空機基礎検討」のやりかたを教えてくれた。それを脇から見ながら「僕が昔やったようなことやってますね」といった人は、今民間旅客機製造企業の社長をしている。
課長は「これ超電導モーター使わんと成立せんぞ」と言い続けていた。この人はとても鋭い人だが「決めつけ」がひどいのが玉に瑕だった。今から思えば彼の「決めつけ」は8割の場合仕事の効率を上げるのに効果的だったのだと思うが。(彼は最終的に役員になった)
双胴式にしろ、というからそういう機体の絵を書いた。モーターの効率とか太陽電池の効率とか計算するとなんとなく成り立ちそうだった。(普通のモーターで。課長は「超電導モータが」と言い続けていたが。ちなみに当時常温超電導が話題だったのですよ)
とはいえ、私のようなチンピラが計算したものでは心もとない。専門の航空機基礎設計課に検討を依頼することにした。打ち合わせにいってこれこれこういうものを考えたいのです。成立性について検討願えませんか、とお願いした。相手は一応検討してみます、というような顔をしていたと思う。
しばらく後に返ってきた答えは「そんなことはできないよ」だった。それは技術的にみて難しい、という趣旨ではなく「そんな検討はできない」という門前払いだった。航空機基礎設計課といってもすでにある機体の細かな改修とか、海外の機体の模倣しかしていない部署だったから「0から設計」ということはできなかったのだと思う。
時を同じくして私にその検討を命じた課長も「飽きた」ようだった。(この人のもう一つの欠点は飽きっぽいことだった)そして私の検討と私が書いた「双胴の太陽電池動力24時間滞空ドローン」はお蔵入りになった。
そして今私はこのニュースを読んでいる。
なかなかドラマチックな展開となった。Wall Street Journalによれば、Googleは高空に長時間滞空するドローンのTitan Aerospaceを買収した。
via: Google、Facebookも狙っていたと噂の長時間滞空ドローンのTitan Aerospaceを買収 | TechCrunch Japan
大戦中日本で原子爆弾の研究をしていた人は、広島に原爆が投下されたことを知り
「日本の技術は根本的に敗れたのだ」
と書いた。私はそこまで深刻に受け止めてはいない。しかしこういう「新しい革新的なもの」は決して日本の大企業からは生まれないのだという思いを新たにしている。