春秋の筆法
2014-04-30 07:08
マスゴミと言われようがなんだろうが、いろいろな理由により「意に染まない文章」を書かざるをえない記者もいるのだろう。
そういう時こそ中国の知恵に学ぶべき。表向きは決して逆らっているようには見えないが、よく読めばわかる批判を忍ばせることは可能なのだ。そうした例としてこの記事を読んでみよう。まずは冒頭に「スタンス」が記述される。
実質的な大幅値下げとなるドコモの新料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」。
via: 独身、夫婦、家族…「ドコモ新料金」お得な利用法を解説 (1/4ページ) - SankeiBiz(サンケイビズ)
まず「大幅値下げ」という(おそらくは強制された)スタンスを述べる。これで首はつながる。さてここからは「ホンネ」を書く場所だ。
記者は20代の独身男性で配偶者を得る予定も当分ない。現在入っているデータ通信量3GBの「Xiパケ・ホーダイライト」プランでは、月額5743円に通話料がプラスされた料金を払っている。新プランでは、他社の携帯電話と固定電話を含め国内通話がかけ放題となりデータ通信量が2GBで6500円。判断が難しいところだ。
via: 独身、夫婦、家族…「ドコモ新料金」お得な利用法を解説 (1/4ページ) - SankeiBiz(サンケイビズ)
「判断が難しい」とは最大限「権力者」に配慮した表現。記事を読めば普通の人であれば「大幅値下げ+サービス劣化じゃん」と気がつく。しかしそれでは首があぶない。ちゃんとDocomo様の素晴らしさを讃えよう。
佐久間さんは「スマートフォンとタブレットの2台持ちなども良いと思います」とデータ通信のみ利用するデータプランとの組み合わせを勧めてきた。
(中略)
親切な対応に感激した記者は、ついでに子供がいない30代の先輩夫婦のケースも尋ねてみた。
via: 独身、夫婦、家族…「ドコモ新料金」お得な利用法を解説 (2/4ページ) - SankeiBiz(サンケイビズ)
こちらが必要としていない回線を余分に購入することを薦めてくる。これでこそDocomoの社員。下賎な民はDocomoの「純増」に貢献すべきだ。ここで「おしつけがましい」などと書くことはできない。
「親切な対応に感激した」と書くのが正しいサラリーマンというもの。えっ、これでも足りませんか?ではこれはどうだ。
「家族が増えればそれだけシミュレーションが必要になります。ご利用方法を詳しく聞かせてください」。佐久間さんが真剣な表情で尋ねてきた。利用者のためには面倒を厭わない天使のような人だ。
via: 独身、夫婦、家族…「ドコモ新料金」お得な利用法を解説 (3/4ページ) - SankeiBiz(サンケイビズ)
Docomo様の店員はすべて「天使のような人」これだけ書いておけばいきなり首を飛ばされることもないだろう。誰かが「あれはいくらなんでも書き過ぎでは」と言われたら
「失敬な。本当に天使のような人だったのです」
といえばよい。誰もそれを否定はできまい。
いや、面白い記事を読ませてもらった。多分この記事を強制した人間は冒頭の「大幅値下げ」だけ読んで「よくやった」とご満悦なのだろうな。