21世紀の帝国陸軍

2014-08-05 07:25

ゼンショーの報告書を読んで、そうした感想を持った人は多いに違いない。

多くの人が指摘していることだが、同じように話題になる企業、ワタミやユニクロと比べ、こうした外部機関に調査を依頼し、かつその内容を公表したことは率直にすばらしいと思う。しかし「なぜそんなことをしたのか」という疑問も残る。

そうした疑問に対する答えはおそらく以下の言葉に現れているのだろう。

目を覆うばかりの労基法違反が蔓延していることが明らかになりました。慢性的な長時間労働や、36協定違反、15分単位で労働時間を切り捨てる管理のずさんさなど、あげればキリがありません。まるで、労基法など『有って無いかの如く』のありさまです。

via: 「蟹工船や女工哀史に匹敵する」 すき家「調査報告書」を労働弁護士はどう読んだか?|弁護士ドットコムトピックス


こうした指摘に対する答えは

小川: 第三者委員会も言っているように、ブラックとかホワイトといった言葉は、人によって定義が違うわけですから、僕らとしては、そういったレッテルを貼られるということは非常に不本意です。真面目にやってきているのに、ブラックというレッテルを貼られて、社員たちも「非常に悔しい」という思いが強いです。

via: すき家は「ブラック企業」か? 小川会長「レッテル貼りはやめてほしい」【動画あり】|弁護士ドットコムトピックス


まじめにやっているんだから法令違反など問題ではない。いや、問題はあるのかもしれないけど改善していきます、という答え。つまりこれはゼンショーの

「これまでも、これからもブラック宣言」

なのだ。そしておそらくこの報告書の内容は、彼らの中ではそれほどの重みを持っていないのだろう。「時期はわかりませんが、改善をしていきます」といえばどんどん働き手が集まると本当に信じていると思える節がある。

一方で、ゼンショーホールディングスの小川賢太郎会長は、「『人手が足りないなら店を閉めろ』というのは乱暴な話だ。ひとつの店で、働く人は15人から20人いる。すき家は、彼らにとってかけがえのない職場でもある。従業員やその家族からは店を開けてくれという声もあり、店を閉めるのは我々にとっても断腸の思い。一日も早く採用をして、店を開けることが我々の責任だと考えている」と理解を求めた。

また、現状については、「基本的な考え方は、時間帯の入客数に応じた適正な労働力投入だ。それをやってきたが、(従業員が)採れないとか、採りにくいとか・・・」

via: すき家の「ワンオペ」解消はいつ? ゼンショー社長「決意」語るも時期は明言せず|弁護士ドットコムトピックス


人は増やせません。でも店は閉めません。この言い訳は

「血を流して得た土地からの撤退などあり得ない」

という帝国陸軍のロジックとぴったり重なる。補給も続かない。戦争終結の道筋も見えない。だけど中国から撤退はしない。

何度も実感することだが

「狂った組織では、もっとも狂った者が出世する」

おそらくいくつか考えるべき点がある。なぜ日本には帝国陸軍が何度も現れるのか?こうした事情が明らかになり、かつ「これからもブラック宣言」がでた企業で働こうというのはどういう人たちなのか?なぜ彼らと彼女達はそうせざるを得ないのか?

個人としては、会社のすぐ近くにあるすき屋ではなく、少し離れた吉野家に行くことから始めたい。