十把一絡げ
2014-08-22 06:58
人間が自分からはなれた地域をどこまで「人つのもの」として見なすかはなかなか興味深い研究課題だと思う。関東は放射能で危険だから沖縄に移住する人もいるし、そもそも日本全体がだめだ、という人もいるだろう。うちの奥様は「福島産の野菜は買いたくないわ」と真面目顔で主張する。これは恥ずべき事だが事実である。彼女の中では「福島県とそれ以外」と線を引いているようだ。
さて、遠いアフリカのエボラ出血熱である。おそらく世界中で一番多い反応は「アフリカにはエボラが蔓延している」というものだろう。西アフリカと他の国がどれだけ離れていようがおかまい無しである。
昨日興味深いグラフを見つけた。
WHOエボラ集計(2014/08/18時点)の感染者数及び、WHOが把握している感染者数の増加を、一週間単位に振り分けた値は、以下のように推移している
via: 深刻化するリベリアのエボラアウトブレイク: 忘却からの帰還
人口1000万人のギニア(1人あたりGDP 1000ドル)の新規感染者数をそこそこに抑えこんでいる。人口600万人のシエラレオネ(1人あたりGDP724ドル)は新規感染者数が次第に増大しており、事態は悪化している。それでも指数関数的に増大しているわけではない。これに対して、人口420万人のリベリア(1人あたりGDP 372ドル)はアンコントロール状態で、感染者数が増大している。
国によってその感染拡大度合いは大きく異なっているようだ。一番状況が悪いのはリベリアらしい。先日エボラ隔離施設が襲撃された場所はこの国にある。
しかし私はリベリアという国について何も知らない。Wikipediaを調べて驚いた。なぜ今回のエボラ関連のニュースに「星条旗のような旗」があるのか不思議に思っていたが、リベリアという国はアメリカの黒人を「逆輸入」して作られた国なのだな。
via: "Ebola is real": 忘却からの帰還
[Ahmed Jallanzo, EPA on [USA Today (2014/07/27)]
こういう状況を知ると、いったいなぜこんなことに、と考える。彼らと我々を隔てているものはなんなのだろう、と。いろいろな国に見られることだが一番恐ろしいのは「無秩序」ではなかろうか。「無政府状態」と「独裁者による支配」のどちらをとるかと言われれば、後者であるとしか答えようが無い。そしてもっと恐ろしいのは、「独裁者から解放された」筈の国のいくつかが「無政府状態」になっているように思われるところだ。
東西冷戦が終結したとき、知り合いの奥様は「これで世界が平和になるのね」と言った。どうも世界はそれほど単純な場所ではないようだ。