オーディオはエンジニアリングではなくファッション

2015-01-27 07:22

いや、前回書いたことの続報なのだけど。

オーディオ研究者の国際組織であるAES(※)は、SACDと普通のAudioCD(RedBook)の音質の違いが果たして人間に判別可能なものか?をテストした結果を2007年に発表しました。
http://drewdaniels.com/audible.pdf
http://mixonline.com/recording/mixing/audio_emperors_new_sampling/

結果ですが、554回のテスト結果、正答率は49.82%、つまりほぼ完全に半分であり「まるでコイントスで決めたような結果」だったとのことです。

引用元:価格.com - 『SACDと普通のCDの音質差は人間には判別不可能』 ヘッドホンアンプ・DACのクチコミ掲示板

でもってこの引用ページに書き込まれた「オーディオファン」の書き込みを要約すると

「信じるものは救われる」

となる。一歩引いてみれば「信じるものは搾取される」が正しいのだが、まあ人間心の拠り所をどこかに持つ必要もあるのだろう。

 ソニーのオーディオ事業は黒字を確保しているとみられるが、スマホの普及などで市場は縮小傾向にある。このため、スマホでもハイレゾ対応モデルをそろえ、差別化を図る。

 ハイレゾを“救世主”と位置付けるのは他社も同様だ。パナソニックは4年ぶりにオーディオ機器の超高級ブランド「テクニクス」を復活させ、対応製品を投入する。

引用元:「ハイレゾ音源」に復活託すソニー スマホ不振…携帯音楽プレーヤーで攻勢 (3/3ページ) - SankeiBiz(サンケイビズ)

というわけで「業界」あげてオカルトに邁進しようとしている。しかしこれは「オカルト」というほど非難されるべきことではないかもしれない。

こういうことだ。つまりオーディオはエンジニアリングではなく、「ファッション」の領域に入った、と。同じ製品であっても、ブランドマークがつくだけで値段が何倍にもなるのがファッションの世界。それであればまだ「音楽のビット数が多い(人間は区別できないけど)」のオーディオのほうがまだ良心的とも言える。

考えてみればApple Watchも「家電」から「ファッション」の領域に踏み出そうとしていると考えることもできる。であれば「ハイレゾ信仰」とその信者からの「お布施」に企業復活をかけるのもそう非合理的なことではない。一エンジニアとしては、かつての日本家電メーカーの凋落を見る思いで寂しくはなるけどね