ロシアとの同盟を選択した国
2015-03-18 07:08
終戦後間もないころに書かれた伊藤正徳の本にこんな下りがあった。
「アムール川の流れが方向を変えないように、国の本性も変わらない」
その頃にはおそらく「ソ連、中国」を理想郷化する人たちもいたのだろう。伊藤の言葉はそうした浮ついた人間たちに向けられたものと考えるべきだ。仮にそうした国と条約を結ぶのであれば、独ソ不可侵条約のようなものであるべきだ。はたして任天堂にそれが可能だろうか。
もちろん任天堂にスマートデバイス戦略で提携を持ちかける事業者は多かったのだそうだ。そんな中で2010年からコミュニケーションを続けてきたDeNAと組んだ理由は、「トップレベルのサービス構築、運営ノウハウにある」(岩田氏)という。
さらに、Q&Aセッションでは、繰り返し提案をしてきたDeNAの情熱、さらには「言葉は極端だが『黒子になって構わない』と言ってくれた。サービス開発に協力をいとわない。エース級人材を当てて頂けるというコミットメントがあった」(岩田氏)とその理由を付け加えた。
目先の利益よりゲームの魂を大切にしてきた任天堂が、ゲームの魂など知ったこっちゃない。とにかく射幸心をあおり、じゃぶじゃぶ課金、金、金、金のDeNAと提携することになった。
これは独ソ不可侵条約と同じく、両者にとって誠にわかりやすい弱点の補完でもある。DeNAは結局自分たちでは何も新しく生み出すことができない。彼らは所詮「金儲けにしか関心のないコンサル」。だから喉から手が出るほど知的財産が欲しい。
逆に任天堂は素晴らしいコンセプトとハードを作ることができるが、悲しいくらいにネットの世界ではダメだ。今だにWiiをたちあげると「Wiiの間」とか「Wiiニュース」のアイコンが見える。任天堂がWiiをプラットフォームとし、その上でネットのサービスを提供すると聞いた時、それを阻むものは何もないように思われた。しかし私の予想は間違っていた。Appleがネットではダメダメな以上に任天堂はネットの世界では無力だった。
その弱点を補強するため「はてな」と提携とかではらちがあかないことに気がついたのだろう。東方の安定を保証するためソ連と条約を結ぶことを選択したのだ。そのイデオロギーが180度反対であることを100も承知の上で。
ロシアがいつまでたってもロシアであり続けるように、DeNAもDeNAであり続ける。岩田社長が平沼よりは現実的で鋭利な知性をもってこの判断をしたことを祈るばかりだ。
「任天堂やソニーは、人間でいうと還暦を過ぎている。日本で過去30年間に生まれた企業が、世界のリーダーに上り詰めたケースはまだないが、その歴史を変えていく」
横浜市内で先月31日に開かれたゲーム開発者向けイベント「CEDEC(セデック)」。ソーシャルゲーム配信サイト「モバゲータウン」を運営するディー・エヌ・エー(DeNA)の南場智子社長は基調講演で、過激な挑戦状をたたき付けた。