ガラケーの思い出

2015-05-08 06:59

2008年、私はあるベンチャーに転職した。そこで初めて担当した仕事はガラケーの上でいろいろなアプリを構築できる仕組みの提案だった。

「こんなことができないか」という質問をキャリアに投げる。こんなことならできます、と返答が返ってくる。スマホが当たり前になった今では信じられないことだが、画面の一部分に動画を表示することすら容易ではない。しかし私が勤めていた会社は「いろんなプラットフォームで共通アプリが動かせます」が売りだった。だからiアプリとかezwebとかいろいろなものを検討した。

ほとんどの人は忘れていると思うが、当時「ケータイサイト」という信じられないような醜く、そして下品なサイトが多数構築されていた。iPhoneが出た当初はこんな意見もあったほどだ。

インターネットマシンとしてみたとき不便に感じたところ

ケータイ向けサイトが見れない
UA判定されるとPCサイトに飛ばされる
ケータイ向けサイトを閲覧したときにショートカットキーが使えない
きつすぎ。スクロール&スクロール&スクロール。目がまわる...は冗談で手間がかかる
縦長サイトの閲覧が超めんどい
↓キー押しっぱなしで最下段までがーっとスクロール、という機能がないため縦長サイト閲覧がとっても辛い。最上段に行くにはアドレスバーWタップという手が用意されているんだけれどねぇ...。

引用元:iPhone 3Gはインターネットマシンとして見ても微妙? ガラパゴス・ケータイはやっぱりすごかった - キャズムを超えろ!

いや、インターネットマシンとしてのガラケーは完成している!iPhoneなんてお話にならない!この業界で7年という年月は信じられないほど長い。もちろんこういう感想を抱いた人ばかりではなく、ちゃんと未来を見通していた人もいた。そしてこの「未来を全く見通せなかった人」が今でも偉そうにあちこちで講演しているのを知ると「この業界」の腐った構造にため息をつきたくもなる。

そして今朝この静かな記事を読む。

日本経済新聞の報道によれば、国内携帯メーカー各社は2017年度以降に従来型携帯電話、いわゆるガラケーの生産を終了します。理由はチップセット等の部品調達が難しいため。この報道を受けてSNSなどでは『ガラケーの生産をやめないで』との声も聞かれました。

しかし実際には、ユーザー目線におけるガラケーは存続します。見た目や操作性はガラケーと変わらず、中身をAndroid等のスマホOSに置き換えた、いわゆる『ガラホ』に移行するのです。

引用元:ガラケーから『ガラホ』へ。静かに移行する2015年 - Engadget Japanese

キャリアにとっても、一人当たりからより金をしぼりとれるし移行に賛成だろう。どちらにしても「完成されたインターネットマシン」を使う気のない私にはユーザとしてはどうでもいいことである。

しかし

エンジニアとしては「あの苦労は一体なんだったんだ」と思わずにはいられない。それはいろいろな形でケータイのソフト開発に携わらされ、文字通り廃人となった多くの人にとっても共通する思いだろう。

YRP野比って廃人養成所でしょ

引用元:JQさんはTwitterを使っています: "YRP野比って廃人養成所でしょ"

苦労はどこかで報われるなどというのは「神話」にすぎない。ガラケーの上で「iPhoneみたいな」タッチ、スワイプを一生懸命実装していた人たちの苦労はなんだったのか。