大きな会社で偉くなる人
2015-05-07 07:42
もちろん会社にもよるのだが、大きな会社で偉くなるために一番考慮すべきは「権力のある人のご機嫌」であり、一番考慮する必要がないのは「部下・顧客」であると悟りを得たのはだいぶ前のことである。
であるからして大企業の「偉い人」がバカなことをやっているからといってその人を非難するのは間違っている。おそらくその人は「権力のある人のご機嫌」をとることに長けているのだろうし、その人の「急所」を絶対につかない術を心得ているのだと思う。
それゆえ会社によっては偉くなる人にある「型」が存在する、と私は思っている。例えば親愛なるソニーだ。
東京・銀座のソニービルで開催している。1970年代のラジオから最新スマートフォン「Xperia Z3」までが並べられた会場で、現在のソニーデザインを担うクリエイティブセンターセンター長である長谷川豊氏に話を聞いた。
彼の言葉を一部だけ引用すれば。
--以前のデザインと現在のデザインを比べて見ての感想を教えて下さい。
スマートフォンに代表されるように、現代のデザインはディスプレイが大きくなって、そこを中心に展開されています。しかし今少しずつディスプレイだけでなく、ものを触って感じる部分が大事になってきているのかなと思っています。
タンジブルユーザーインタフェースのように、より実体感のあるインターフェースも注目されていますし、実際に触れることに対しての重要性は増していく気がします。そう考えるとさらなる新しいデザインが作れそうだと思っています。
今のソニーという会社で出世する人の言葉には共通点がいくつかあり
・「今のソニーの製品」はワクワクし、良いものだと主張する。
・どこか他人事。責任者というより評論家
・「こういうことをやりたい」と将来に対するあやふやな希望だけ述べる
多分こういう姿勢が今のソニーで「出世する秘訣」なのだろう。そりゃそうだわな。船は沈没しかかっているのだけど、誰も「今のソニーはクソだ」という言葉を聞きたくはない。
さて、次に楽天である。公用語が英語の会社だからこういう人が責任者になる。
先生役になってくれたのは楽天執行役員、モバイル事業長の大尾嘉宏人(おおおか・ひろと)氏。2004年にロチェスター大学ウイリアムEサイモンビジネススクールを卒業し、凸版印刷でインターネット事業に携わったあと、2007年に楽天に入社したイケメンである。
でもってMBA持ちのイケメンがいう言葉がまた素晴らしい。
「申し訳ありません。その機種は大人気で在庫が薄くなったものですから、MNP非対応をということにさせていただいております」
大尾嘉さん、高止まりしている日本のスマホ料金に風穴をあけようという御社が、そういう小細工で客を不人気機種に誘導するのは、あまり感心しませんな。
背景を説明すると、この記者は楽天モバイルに移行しようとあれこれ格闘し、最後の最後で
「この機種はMNP非対応です」
と言われたのだそうな。
大企業で出世するのはこういう「建前」を堂々と主張できる人間でなければならない。在庫が少ないからMNP非対応。さすがMBA。何を言っているかさっぱりわからん。いや、実態は記者の人が喝破した通りなんだろうけど
「そうですよねー。それ、僕も納得いかないんです」
などと言ってしまうようでは失格だ。
でもってその上司はこういう人。
登壇した楽天の平井康文副社長は、さわやかにこう語った。平井氏はマイクロソフト、シスコシステムズを経て今年、楽天に移ったITのスペシャリストである。
「今後はコンテンツをアグリゲーションし、共通のサービスデリバリープラットフォームを構築することが非常に重要だと考えております」
ここに見事な「型」ができていることを感じるのは私だけかな。