SoftBank World2015に行ってきたよ

2015-07-31 07:36

いろいろな意味で面白いイベントだった。会場についてまず気がつくのは、スーツをきた若者たちがそこかしこに立っていること。思うに彼らと彼女たちはSoftbankの営業で、お得意様がきたらすぐに挨拶しよう、と身構えているのだろう。

この一事をもって全体を律するのはどうかと思うが、このイベント全体が営業主体で作られているように感じた。展示も技術的に面白い、というよりはとにかく売り込み売り込み。カラーでできたコードを読み取るスタンプラリーのようなイベントがあるのだが、私のiPHone4Sでは読み取りに異常に時間がかかってしまった。他の人の新しい機種だとあっというまに読み取れるのにな。(嘆息)

軽食やペットボトルのお茶、アリナミンが無料で景気良く振舞われているのもこの類のイベントとしては珍しい。無料となると体重のことも忘れてがっついてしまうのは昭和中頃生まれの悲しい性か。

さて、今日のおめあては講演である。まず「実践!Surface 3×Office 365導入」というのを聞く。これはHDEとかいう会社の役員が講演してくれたのだが、とてもそうは思えなかった。端的に言えばマイクロソフトのセールスマンの営業トークを40分聞かされているかのように感じた。彼は一体何がしたかったのだろう。

次に聞いたのはIBM Watsonの話。これは面白かった。Watsonというのは私が理解している限り、自然文解析と、膨大なデータを食わせてやってそれの検索を行い、結果をランクづけして返してくれるようなものだ。最初に医療診断のシステムを作ったときは学習に数千時間かかったとのこと。それだけ投資しないと結果は得られない。そして用途は昔懐かしい「エキスパートシステム」が適用されていた物のようだ。思うにエキスパートシステムはいつまでたってもデモシステムの域をでなかったがそれが最近のコンピューティングパワーで、大量の「知識」を食わせそれに対する解釈を行えるようにすることで「知識獲得を効率化した」とみるのかな、とかそんなことを考えていた。今や医療の論文を全部読める人はいない。そこをWatsonがサポートするだけでも大きな成果があるに違いない、というのは説得力のある主張に思える。デモを見る限り「特定分野に使える便利な検索エンジン」のようにも見える。

最後に聞いたのが「ヤマダ電気の売り場にWatsonとPepperを使った」話。これは別の意味で面白かった。まず最初にヤマダ電気のCIOがでてきて「今日講演させていただいてありがとうございます」と聴衆には全く興味のない謝辞を延々と述べる。なんだか素人向けの宣伝文句のようなことを述べる。

次にIBMの誰かが出てくる。この人が真打かと思えば、この人も営業スローガンをいくつか述べるだけ。3人目にようやくエンジニアに近い人がでてきた。

なんでもヤマダ電気からTVを売る時のQAパターンを650ほどいただいてそれをWatsonに食わせたのだそうな。そんな数で足りるはずがない。かくしてPepper君は「今おつかいのTVのサイズは何インチですか?」と聞き相手が答えると「もっと大きいをお勧めします」と決め打ちのシナリオにそって会話を進める。そもそもWatsonは聞かれたことに対して精度の高い答えを返せるのだが、こうした「売りこみの組み立て」は全く別の問題だ。

見ているうちに「ああ、こういうのは何度も見たなあ」と思う。10年以上も前にデモされた「サツキ」と同じく「決められたシナリオに沿っている限り、それなりに動くように見えるデモ」だ。正直なエンジニアは「トイレはどこ?」と聞かれてPepper君が凍るところもビデオで見せてくれる。「こういうのは随時追加すればいいんです」とはいうが、そういう言い訳も聞き飽きた。人間の問いかけパターンは無数に存在しており、それに対処できる方法を見つけた人はまだいない。(私が知っている限り)

最後に再びヤマダ電気のCIOがでてくる。この人はどうもいい人らしく冬にはさらに実証実験。来年には店舗を増やす、という宣伝スライドを一通り述べたあと「Q&Aのデータが少ない。この通りいけばいいのですが」と本音を吐いてしまう。とはいえさすがCIO。こういう類のデモは決して予定されたロードマップ通り進まず消えるという特徴を持っている。来年のSoftbankWorldでどんなアナウンスがあるか楽しみにしていよう。

一歩外にでると次の講演を待っている人で通路は大混雑。イベント主催者側がベストを尽くしていることは伝わってくるが、いかんせん場所が狭いのではないかと思う。とはいえ都心でアクセス便利でもうちょっと広い場所、というと、、どこかあるんだろうか。

社長の意識は投資案件にしかないようだが、ソフトバンクの社員はそれぞれいろいろなことを試みている。その熱気だけは十分伝わってきたし、来年もいくのではないか、と思う。