東芝賛歌

2015-11-20 06:56

先日人間中心設計の講演会に参加した。私はこの言葉にどことなく気持ち悪さを感じる人なのだが、それでもユーザ観察やプロトタイピングが普及したのはこの言葉とそれを支えた人たちの努力の結果、という気がした。

とはいえ

今日書きたいのはそのことではない。講演者の一人に東芝の人がいた。

三上 龍之株式会社 東芝 デザインセンター デザイン第一部 部長

プロフィール デザインセンターにて、電力・社会インフラ事業、コミュニティソリューション事業、ヘルスケア事業、電子デバイス事業、インダストリアルICTソリューションなどの分野での、コンセプトデザイン、ソリューションデザイン、コミュニケーションデザインに従事。

引用元:カンファレンスプログラム | 進化する組込み技術とIoT技術の総合展/Embedded Technology & IoT Technology 同時開催!

「部長」というからには、東芝社内でその功績が認められている人である。そして多分そうなのだろうな、と思えるような講演だった。

例えば私ならば

「何かと皆様おさわがせしております東芝に勤務しております。」

と自虐的ギャグからはいるところだが、部長はもちろんそんなことはしない。組織はどうでもよく、自分のデザインに対する情熱を語るかといえば「部長」はやっぱりそんなことはしない。彼が最初に述べたのは

東芝はいかに長い歴史と理念を持つ会社であるか。どんな幅広い製品ラインを持っているか。どんなスローガンを掲げているか

を数枚のスライドを使って長々と述べたのである。そのあとも地に足がついた言葉は一つもなかった。ただGood Design賞を受賞したものを並べ自慢していっただけ。最近明らかになった東芝のチャンレンジを思えば、そうしたことがはそらぞらしい響きしかもたない。しかし彼はとうとうと述べ続ける。

いや、すばらしい。大企業で出世する人間とはこうでなければならない。

東芝の不正会計問題を調査した第三者委員会が、米原子力子会社ウエスチングハウス(WH)の減損問題を知りながら、東芝と「謀議」の上で調査対象から外していた。日経ビジネスは、東芝の法務部門トップが謀議の内容を現社長の室町正志や前社長の田中久雄らに伝えていた電子メールの記録を入手した。

引用元:スクープ 東芝、室町社長にも送られた謀議メール:日経ビジネスオンライン

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話はかわる。人間中心設計でもなんでもいいんだけど、やっぱり「結果」だと思うんだよね。ヤマハの人は

「プロトタイプは作らず、シナリオ共感度だけで評価します!」

と主張し、それはわかるんだけどやっぱりもの作って触らないといいか悪いかわからないことはある。iPhoneをシナリオだけで共感しろといっても無理だ。「いまある携帯電話とおなじじゃん」でおしまいになっていたし、実際ほとんどの会社はそうしていた。

こう意見をいいたくなる発表はヤマハのだけだった。しかし一つはいい発表に巡り会えたことを幸運に思わなければならない。