ユーザインタフェース開発失敗の本質
2016-01-02 08:01
という本をAmazon Kindle ダイレクトパブリッシングで出しました。
iPhoneはユーザインタフェースが圧倒的な商品力に結びつくことを示した。しかし「ではiPhoneのようなものを」と新しいユーザインタフェースを開発しようとし、失敗した例は枚挙にいとまはない。なぜ失敗するのか。ありがちな8っつの失敗パターンを分析。
-ユーザビリティ原理主義
-アルゴリズム原理主義(及びロンギング原理主義)
-すごいデバイス原理主義
-多機能原理主義
-人に「自然」なインタフェース原理主義
-エージェント原理主義
-ユーザの声原理主義
-メタファー原理主義
その上でその根底にあるの4つの根源的な問題について述べる。
問題その1:フレーム問題
問題その2:記号接地問題
問題その3:真面目に道を極めると会社が滅ぶ:イノベーションのジレンマ
問題その4:「革新」に対する矛(ほこ)と盾(たて)
最後に「ではどうすればいいのか」についていくつかの事例をもとに論じる。
いつのまにか10年以上にわたってユーザインタフェース関係の仕事に携わることになりました。そして多くの失敗を見たり、体験したりしてきました。
何にでもパターンを見出そうとするのは、統合失調症の症状でもあるようなのですが(すくなくとも映画ビューティフル・マインドではそうだった)この本ではその「失敗するパターン」をまとめました。
例えば
画面に可愛いキャラクターがでてきて(最近では実態をもった女性型ロボットが)「素晴らしい会話のデモを見せる」というパターンは何十年も前から何度も繰り返されています。だいたい「2−3年後の実用化を目指している」という言葉とともにアナウンスされるのですが、その「2−3年後」は永遠にやってこない。
あるいは
「徹夜してすごいデバイスを作りました!何に使えるかはこれから考えます!」というものも毎年どこかでみかける。そしてその「何に使えるか」が見出された例はiPhone以外に見たことがない。
ジェスチャー認識を使ってます!音声認識を使ってます!人にやさしいインタフェースだからいいんです!という試みも後を絶たない。しかし本書を読めばそれらが「むちゃくちゃ不自然なインタフェース」であることが理解できるでしょう。
こうしたパターンは何度も何度も繰り返されます。ある尊敬する研究者がインタラクション系のイベントを評して
「毎年同じようなことをしているなあ」
とつぶやいたのを聞いたことがあります。
卒論が、修論がかけるからいいじゃないか。あるいは学生の研究なんだから一生懸命がんばればいいじゃないか、という見方もあるでしょう。しかしそうした失敗パターンは学生の研究に限られるものではありません。「スーパーコンピュータ」と呼ばれたPS3の失敗を覚えている人は多いでしょう。他にも日本を代表する一流企業の社員が
「鉄道の逆説」
そのものを口にすることもある。
そうした失敗パターンの背後にあるものは何なのか。「人工知能」の研究は何十年にもわたって行われており、その「失敗の本質」についても研究されているのに、それを無視する人の多さには驚くとともにそれ自体研究に値するのかもしれません。そしてこの章には珍しく本書オリジナルの
「Private版イノベーションのジレンマ」
が挙げられています。「新しい提案をどんどんだせ!」という言葉を間に受け、提案した数々の自信作が全くわけのわからない理由からボツにされる。なぜだ。会社で働いたことがある人ならば、あるいはこのジレンマにつきあたったことがあるかもしれません。
という具合に
散々気が滅入るような話が続く。こんな話読んでいられるか、と放り出しそうになるのを(電子書籍をどうやって放り出すかは考えないことにして)少し我慢して最後まで読んでいただきたい。
「ではどうすればいいのか」について記述した4章の弱々しさには笑えること請け合いです。というかこの本を最後まで読んでくれる心の広い人であれば、「散々読ませておいてこれかよ!」と怒ることはなく、投げっぱなしのラストを読み、生暖かく微笑んでくれることを私は確信しております。
最後にAmazonに寄せられたレビューを引用しておきます。
(いい加減やめていただけないかしらそれ)がライラの(偽らざる本音)であり
(自分に絶望したをやりとおす方法)と(自分に絶望した者に対し嫌悪感を抱かない方法)はなんなのかを
人間と天族の口から吐かせることで(自分に絶望した)を(おしまい)にするのがライラの目的であり
これを実現させるためにライラは開発に手を出したのである