会社は誰のものか

2016-04-07 07:11

その昔アメリカの会社とあれこれプロジェクトをやった。その会社のロゴにはEmployee owned companyと書いてあった。

数十年ぶりになぜそんなことを思い出したか。クックパッドという会社で起こっているこの騒動である。

3月24日に開かれた株主総会の翌週月曜日、全社員に向けてある社員がメールで訴えた。「今の状況は、おかしいのではないでしょうか」。メールを送ったのは、2015年4月にクックパッドに入社した、元くらしの手帖編集長の松浦弥太郎氏だ。呼応するように署名活動が始まり、国内240名超の正社員のうち、8割以上の署名が集まった。

 (中略)

社員は労働組合を立ち上げ、佐野氏と岩田氏を退陣させるための戦略も練り始めたという。

引用元:クックパッド、創業者退陣要求で労組を結成:日経ビジネスオンライン

私が最初に勤めた会社にはあたりまえのように労働組合があった。そこでいろいろ貴重な経験もしたが、普通IT関連のベンチャーには労働組合がない。それが出来ること自体普通ではない。

なんだかんだといって株主は法律的に多くの権限を有しているし取締役だの社長だのも同様だ。それに対して不満をもつ人間も一定数存在しているのだが、普通はクダをまく程度で収まり、我慢ができなければ転職する。そもそもベンチャーだし。企業にとどまるならば会社に表立って逆らうのは賢明ではない。

しかし明白に会社のやり方に異議をとなる署名に8割以上の社員がサインするとは尋常ではない。創業者と雇われ社長の間の路線をめぐる内紛と思っていたが、どうやら話はそう簡単ではないのではないか。

労働組合が佐野氏に対して退陣を要求したとしても、それを岩田氏や佐野氏が無視することは容易だろう。さらに言えば、社員の多くが辞めたとしても、クックパッドの最大の資産である会員組織は会社の資産として残る。

引用元:クックパッド、創業者退陣要求で労組を結成 (2ページ目):日経ビジネスオンライン

これは「事実」である。これをわけ知り顔に指摘する人の多さにも驚くが、もっと驚くべきはこうした事実を知りながら社員が賛同しているということ。されに問題は社員が5割やめてしまったら会員組織は無価値になる、ということ。

ここにはいくつも興味深い物語があるように思う。創業者にして大株主が無能ならばなぜクックパッドは今の成功を作り上げたのか。そして社員はなぜ辞めずに反対署名をすることを選んだのか。