三菱の相川社長がやったこと
2016-05-20 06:56
....すいません。三菱重工から落ちこぼれた私にはこれ以上嘘はつけません。これから書くのは
「三菱自動車の相川社長が最近やったこと」
ではなく
「三菱重工業の相川社長(親父のほう)が20年ほど前にやったこと」
である。
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相川くんは、私がいた航空宇宙部門の長と社長の座を争っていた。航空宇宙部門の長が社長に内定した、という報道もでたのだが、結局相川君が社長になった。今から考えればそれが掲載されたのが当時から「クオリティペーパー」だった日経、ということから何かを察しても良かったはずだ。
相川君は社長就任以来ずっと航空宇宙部門を目の仇にしていた。君たちの生産性は銀座のバーのママ以下だ、とかあれこれ批判していた。
彼が何を根拠にそう言っていたのかヒラの私にはわからない。なんで貴様らこんなに利益がでないんだ。コストがかかりすぎている。そもそもこんなに残業する必要があるのか?と「チャレンジ」を要求されたのが、私がいた工場の長である。
そして正しい三菱の幹部である工場の長はお触れをだした。
「これからは残業無し。定時で帰れ」
注意すべきは「仕事を終えなくてもいい」とは言わなかったこと。つまりそれまで月何十時間やっていた残業を0にしなさい。ただし仕事は今まで通りやってね、と命令したわけである。
「これはどういうことですか」と課長に聞きに言った人間もいた。私は傍で聞いていたが、当時の課長は
「私はとにかく残業を0にしろ。作業効率を上げればできる、としか聞いていない」
と繰り返していた。さすが三菱の管理職。
当時設計部門は平均で月50時間は残業していたと思う。それだけの時間を「作業効率を上げれば削減できる」と言われてもねえ。皆どうしていたのだろう。これは想像だが、ほとんどの人は肩をすくめて定時刻にタイムレコーダーを押していたのではないだろうか。無料で会社に奉仕し、帰宅時に事故が起これば全て自己責任とするのが正しい三菱社員の姿だった。(最近はシステムが変わったそうだが)
私はといえば、当時から正しい三菱の社員ではなかった。激怒したのである。(若くもあった)仕事が終わろうが終わるまいが定時に帰っていたか、あるいは別の方法をとっていたか。仕事が行き詰まっていた時、別の課の課長が相談に乗ってくれるという。待っており定時になったが課長は来ない。残業するな、という命令だからしかたない。帰ると、後でその課長は「あの野郎、帰りやがった」と激怒していたそうである。おかげで私はその課長に大そう嫌われ、昇進が遅れることとなった。
上位者が開けた穴を平社員が血と肉で自発的に埋めるのは日本の組織の大原則。設計部門はそれで済んだが、おさまらないのは現場部門である。労組の人の言葉によれば
「ものすごく士気が下がった」
とのこと。というわけで労組新聞によれば事業所との懇談会でこの「残業禁止令」が話題になった。まず会社側の返答だが
「当初の意図はなるべく定時内で仕事をしよう、というものだった。その指示が伝わっていくうち、強制力をもつニュアンスととらえられてしまったのではないか」
というものだった。さすが三菱の管理職。これくらいのことを顔を赤らめずに言えるようでなければ、務まらない。しかしさすがにここで馴れ合っていては存在意義が問われると思ったのだろう。会社の御用組合と言われていた労組にしては珍しく追求が続き、最後にこう詰め寄った。
「いろいろ説明を受けたが、なぜ残業を0にしなくてはならなかったか納得できない」
それに対して、とうとう会社側も白旗を揚げた
「多少の焦りがあったのも確かであり、申し訳ありませんでした」
と言った(と少なくとも労組新聞には書いてあった)
ちなみに工場の長は
「やればできるじゃないか」
と相川社長からお褒めの言葉を賜ったという噂が流れていた。
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<「とにかく燃費(目標)を達成しろ。やり方はお前らが考えろ」
燃費不正が明らかになって約1カ月。三菱自動車がようやく不正に至る経緯を明らかにした。発端の「eKワゴン」の開発過程で、開発部門の上層部が、燃費のとりまとめを行う性能実験部にプレッシャーをかけていたという。
20年の時を超え、社長が親から子に代替わりしても企業の体質というものは変わらない。不可能な目標を押し付け「やり方はお前らが考えろ」というのはおそらく日本的大企業の伝統なのではあるまいか。あるいは帝国陸軍の伝統でもあるか。かくしてこのような言葉が生まれる。
第一性能実験部長「私は最早燃費目標は断念すべき時機であると咽喉まで出かかったが、どうしても言葉に出すことができなかった。私はただ私の顔色によって察してもらいたかったのである」(牟田口と河辺は同罪だよね
「諸君、性能実験部は、社命に背き燃費を偽装した。資金がないから燃費目標達成は出来んと言って勝手に偽りよった。これが三菱か」牟田口廉也がみてる
弾薬も食料も送らず「インパールを攻略せよ」という電文だけを送り続ける牟田口の姿は三菱自動車幹部の姿とぴったり重なる。
三菱グループの幹部は、「三菱自動車はけしからん」とか言っているようだが、とりあえず自分の顔を鏡で見てごらん、と言っておく。他人を非難するのは簡単で楽しいことだが、自分が同じことをしていない、という保証には全くならない。