提灯メディアと提灯准教授
2016-06-27 06:48
メディアをやっていくのは大変だと思う。特にインターネット上では「講読料」をとれないから、何かでお金をもらう必要がある。
Engadgetというサイトを以前は読んでいたが、実態は「広告チラシ」と違わないことがわかりRSSリーダーから外した。TechCrunchはまだはいっているが、最近になり
「結局ここも金もらって記事書いているのか」
と悟り始めた。例えばこんな記事。
あなたのオルツはクラウド上にいる。このオルツに向かって、ほかの誰かが話しかけると、あなたのオルツは、いかにもあなたが答えそうなやり方で人工合成音声とテキストで回答する。口がパクパクして、目も動くので、それなりにしゃべっているようには見える。どの程度「あなたらしさ」を獲得したかは数値で示されていて、50%を超えてくると、むしろその人らしくない回答を引き出すのが難しくなる、と開発したオルツの米倉千貴氏は言う。
引用元:al+は人格をコピーして、あなたの代わりに仕事をするクラウド上の人工知能アバター | TechCrunch Japan
よくこういう記事を署名付きで表に出せるなあと感心する。金をもらって書いているならネイティブアドと表記すべきと思うのだが。
でもって「さすがに無理がある」と思ったのだろう。(ここら辺の良心のカケラがEngadgetと違うところだ)大学の准教授に推薦の言葉をしゃべらせる、という技に出た。
AI研究が専門でヒューマンインターフェース関連にも詳しい上智大学理工学部情報理工学科の矢入郁子准教授にアイデアの実現性について尋ねてみたところ、「1990年以降のAI 研究で提案されてきたアイディアの1つです。これまでの自然言語処理、知的エージェント、マルチエージェント(知的エージェントの分散協調の研究)、機械学習、ヒューマンエージェントインタラクションなどの基礎研究の成果の統合として、そしてさらに近年のAIブームの火付け役としてのディープラーニングの成果によって実現は可能と思います」との回答だった。
引用元:al+は人格をコピーして、あなたの代わりに仕事をするクラウド上の人工知能アバター | TechCrunch Japan
「AI研究が専門」の矢入准教授なんて聞いたことがない。しかも言っていることは、まるっきり素人のそれだ。なだこれは?と思いサイトを調べてみる。すると次のような研究が並んでいる。
音と触覚を用いた視覚障害児向け中学数学学習コンテンツの開発, 情報処理学会,第117回コンピュータと教育研究発表会,Dec. 9, 2012.
岡本愛弓,福島裕介,矢入郁子
情報処理学会,第117回コンピュータと教育研究発表会 2012年12月
視覚障害者向けタッチパネル神経衰弱ゲームにおける指操作方法の評価
浦島卓也,碓井啓次郎,福島裕介,矢入郁子
電子情報通信学会技術研究報告(福祉情報工学) WIT2012-65 2012年12月
へー。AI研究が専門の先生の研究室で、こういう研究ばっかり発表しているんだ。意外だなー(棒読み)
まあこういう専門の先生がコメントをだせば、詐欺としか思えないセールストークに「実現は可能と思います」となってもおかしくはない。しかしなあ。障害者向けインタフェースの研究をしている先生を「AIが専門」と書くメディアもメディアなら、それを承諾する准教授も准教授だ。
というかそもそも大学の教官をしている人にいちいち目くじらを立てるな、ということなのだと思う。香山リカですら立教大学教授なのだ。TechcrunchはRSSリーダーから外し、矢入という名前を研究会でみたら「AI研究がご専門なんですよね?TechCrunchで読みました!」と明るく挨拶しよう。