トランプを葬った夫妻

2016-08-02 06:41

彼らはそう記憶されるかもしれない。

共和党大会で演説した夫妻である。彼らは息子を戦場で亡くしている。父親は

「(トランプに)尋ねるが、あなたはそもそも合衆国憲法を読んだことがあるのか?もしなければ私が持っているものを喜んで貸そう。

この文章の中で自由と法の下の平等という言葉を探してみろ」

と訴えた。母親は一言も発しない。しかし彼女がどういう気持ちでいるかは画面から伝わって来る。この夫妻のスピーチは喝采をもって迎えられた。私も父親である。異国から身一つでアメリカに来て生活を築いた苦労はしていないが、夫妻の悲しみもそして怒りも画面から伝わって来る。

致命的な失言を何度もしながら驚異的な回避能力を示したトランプだが、この件に関する「反撃」は失敗だった。

これに対しトランプ氏はニューヨーク・タイムズ紙やABCニュースとのインタビューで、妻のガザラさんが檀上で「何も言わずに立っていた」「発言を許されていなかったのかもしれない」などと述べた。
ガザラさんは31日付のワシントン・ポストに寄せた論説で、檀上での発言を控えたのは精神的につらかったからだと反論。「トランプ氏にも愛する子どもたちがいるのに、私が話をしなかった理由が本当に分からないというのか」と問い掛けた。
戦死者の遺族を攻撃したトランプ氏に対し、共和党内部から非難の声が相次いでいる。
同党の重鎮、リンジー・グラハム上院議員は声明で「米国の政治にはかつて聖域があったものだ。戦死した兵士の両親に対しては、たとえ批判されても自分からは批判しない、というように」「自由世界の指導者になろうとするなら、批判を受け入れるだけの力量が必要だ。トランプ氏にはそれがない」と述べた。

引用元:CNN.co.jp : トランプ氏に党内から非難の嵐、戦死者の両親への発言で - (1/2)

ちなみにこの記事では触れられていないが「トランプは何も犠牲にしていない」という夫妻の批判に対しても彼は下手な言い訳をしている。

韓国の全大統領が日本の天皇に関して発言したことで、一気に日本人の反感を買ったようにどの国にも「触れてはいけない鱗」というのが存在する。トランプは愚かにも今回それに触れた。

もしヒラリーが勝てばだが、勝因はこのスピーチだったかもしれない、と誰かが言うだろう。仮にそう言われたところで夫妻の悲しみと怒りが癒えるわけではない。