数は正義

2016-12-05 06:40

トランプが大統領になったと聞いた時、民主主義の面白さに気がついた。所得とか、社会的権力という点では人間には対数規模の差がある。

しかし「投票」という行為の前では同じ「一票」だ。トランプに投票した「アメリカはひどい国だ。トランプにかけるしかない」と信じている人も、一年で何十億円も給料をもらうウォール街の人間も同じ一票。その結果はご覧の通り。

さて、話は親愛なるDeNAである。

「記事の発注を行う部隊は配信本数がKPI(重要業績指標)として設定されており、毎日の配信本数はメディア間で競争させられていた。しかも、SEO対策として1本あたりの文字数の基準もある。長文で大量の記事を安く生産するために、一本一本の記事に対するチェックはおろそかになっていた」

引用元:炎上DeNA、粗悪メディアにとどまらない危機 | インターネット | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

彼らの考えでは人間は「ページを表示してくれる機械」でしかない。安倍総理が閲覧しようが、私が閲覧しようが1ページビューであり、広告の売り上げである。それが大きければ良いので、その結果人が喜ぶとかいうことはどうでもよろしい。検索エンジン向けに最適化し、検索結果の上位に表示されることが正義なわけだ。

ここでも「数は正義」を見て取る事ができる。私のようなマイナーサイトを長年作っている人間にはよくわかる。ああ、私もページビューさえあれば、そこらじゅう広告だらけにして憧れのアフィリエイト生活が送れるのになぁ。

DeNAは一文字一円以下の安い賃金でライターを大量に雇い記事を大量生産していたと聞く。彼らの「ビジネスモデル」で画期的な点は、私のように小難しい理屈を言わず、小金を持っており、かつツールがあれば文章を量産できるような人が日本にたくさん存在することに気がついたことにある。つまり彼らは「金になる数」を制することに長けていたのだ。

私からみてトランプの勝利が信じられないように、DeNAのような会社がなぜ生存しているかも信じられない。これは私が世の中の「数」というものを正しく認識していないからだと思う。おそらく世界は私が考えているのとはだいぶ違う姿をしている。そして時々それが露わになる。