偉業

2017-03-29 07:36

例えば宇宙人が攻めて来て、地球を救うような活躍をすれば映画にしてもらえる。(映画の中でしか起こり得ないが)しかし本当の「偉業」は我々が気がつかないところで静かに起こっている。

時々ふと思うのだ。文明社会-というか私が行きている今の日本という意味だが-はものすごい分業と専門化なしには1秒たりとも維持できない。ビルが崩れず、コンセントからは常に電気を得ることができ空調が効いている。そのどのシステムをとっても私はその仕組みを理解することはできない。しかしそれが「何事もなく動いている」というのは恐るべき偉業の積み重ねの上でしかなし得ないことである。


なんでこんなことを言い出しかといえば、iOS10.3がリリースされたからだ。iPhoneのOSとかいうよく知らないものの番号が0.1上がったからなんだ、という人間は放って起き、ソフトウェアに感心のあるエンジニアならこの「何も起こっていない」状況に驚嘆すべきだ。

さらに、同アップデートでファイルシステムが「HFS+」から「Apple File System(AFS)」に切り替わり、暗号化が強化され、ストレージが最適化される。米ZDnetは、念のためアップデート前にバックアップをとっておくことを勧めている。

引用元:ニュース - AppleがiOS 10.3正式公開、ファイルシステムを切り替え:ITpro

去年のWWDCでAFSが発表されたときは「そりゃそうだろうなあ。HFS+ってもう何年使ってるんだ」と思った。それから1年もたたないうちに、Appleの生命線とも言えるiPhoneのファイルシステムをそれにアップデートするとは。

しかも

今の所「iPhoneが文鎮化した」という声はほとんど聞こえてこない。この世の中の99%の人は「うん。なんだか再起動したね」としか思っていない。もし私がこのアップデートに関わっているエンジニアだとしたらこの24時間は1秒たりとも気が休まることはなかっただろう。これはいわば住人が買い物に行ってる間に家の土台を最新式の免震構造付きのものにすり替えたような離れ業である。

今年のWWDCに私がいけるかどうかはarc4randomの神様のみぞ知るところだが、仮にApple File Systemのセッションがあったとしたら

"This March, we updated file system of iOS to AFS without any trouble"

と誰かが言ったところでスタンディングオベーションが起こってもおかしくない。WWDCという場でこそ、そう讃えられるべきだ。