人の死に反応するということ

2017-06-29 08:03

何度か書いていることだが、我々は「絶対数」ではなく「差分」に反応する。学校の乱射事件で二十三人殺されることは「日常」なのですぐ忘れ去られ、ボストンマラソンで三人死ぬと映画ができる。

ボストンマラソン爆破事件では、イスラム教に改宗した女性が「シリアでは無実の人が毎日たくさん死んでいる」と自らの行為を正当化しようとする。しかしアメリカが直面している「戦い」は映画になるものばかりではない。いや、この戦いは映画になったか。

フアレスで麻薬捜査をすることは町全体を敵に回すことを意味し、もはや犯罪の域を超えた麻薬戦争の得体の知れない闇へと飲み込まれていくケイト。そして、さらなる想像を絶する真実を目の当たりにするのだった……

引用元:【ボーダーライン】あらすじ・映画を見る前に知っておきたいこと

私が愛するエミリー・ブラントだが、この映画は恐ろしくて見ることができない。もっと気が滅入るのは、これが事実を元にしているということだ。

CPJによれば、メキシコでは2017年に入ってこれまでに、7人のジャーナリストが職業と直接的に関係する理由で殺害された。
その背景として、政府が十分な捜査を行っていないことや、犯人が摘発されないことが問題を深刻化させていると指摘。「麻薬密売組織は地方自治体当局に保護され、結託していて、ジャーナリストを殺害しても罪に問われないと基本的に認識している」と述べ、「彼らが情報の統制やジャーナリストに対する見せしめ、あるいはジャーナリストの検閲をしたいと思えば、訴追されることなく実行できる」と話している。

引用元:CNN.co.jp : 拉致のジャーナリストが遺体で発見、今年7人目 メキシコ

アメリカという巨大な麻薬の消費国は、アメリカ自体だけではなく周辺国にもその被害を広げている。これは恐るべきことだ。

ジャーナリストが拉致・殺害されても、極東の国にいる我々はCNN.Co.JPの小さなニュースでそれを知るだけ。しかし私が行ったこともあるメキシコという国がどうなってしまうのか、その前途を考えると暗澹たる気持ちになる。

フィリピン版トランプは、超法規的な命令を出し、それに対して非難の声をあげる人はいる。しかし国がこうなってしまった場合にどうすればよいのだろうか。悪い政府より無政府状態のほうが恐ろしいとは何度も聞くことではあるが。