大きな会社で偉くなる人

2017-08-21 07:24

大きな会社で偉くなる人は、顔も赤らめずにこういうことが言えなければならない、という見本である。

なぜ情報が経営トップまで上がってこなかったのでしょうか。

益子:事を荒立てたくない。今やっていることを否定したくない。事なかれ主義。こうした考え方を生んでいたのが、MMCの中で長い時間をかけて形成されてきた「たこつぼ文化」だったのではないかと思います。若い時から「上司には『できない』ではなく『答え』を持ってこい」と教育されてきたと聞いています。

 このこと自体は全面否定できません。部下が常に「できない」と言っていたら、何も進歩しませんから。ただ、「工夫して答えを探してみなさい」は分かるけど、「できないとは絶対に言うな」になってしまうのが良くなかった。

引用元:三菱自動車・益子CEO、「燃費不正事件」を語る (2ページ目):日経ビジネスオンライン

この益子という人は、三菱商事から横滑りで入ってきた人である。したがって「長年にわたる三菱自動車の文化が問題だった」といえば自分の責任を回避することができる。しかし三菱自動車の第3者委員会の報告書にはこういう指摘がある。

経営陣は、会議の場で、専ら事業性の観点から競合車に勝つためのトップクラ スの燃費達成を求めるばかりであったと認められ、技術的観点からの実現可能性について 積極的に議論に参加したといえるような形跡は見当たらない。
結局、経営陣は、MMC の骨格である開発業務について、その開発の実情や実力を十分に把握していたとはいい難く、開発の現場にほぼ任せきりにしていたといわざるをえない。

(中略)

MMC が起こした問題は、MMC が、会社として起こした問題であり、その責任を、すべての経営 陣と役職員が自分の問題として受け止めるべきである。

引用元:第3者委員会報告書要約版

こうした指摘に関して、日経の記者は書いていないし、当然CEOから言及することもない。つまり

「できないとは言わず、答えをもってこい」

という東芝にも通じるような姿勢は三菱自動車の経営陣にあっても同様だったと考えられる。その点についてはなんの言及も反省もない。

「MMCは確かに悪かったかもしれないが、私は何も悪くありません。むしろ被害者ですから」

という姿勢が明確に伺える。偉い人はこうじゃなくちゃ。

というわけで、多分三菱自動車の内部は何も変わってないんだろうな、と推測する。古い知り合いがMMC務めているらしいのだが、人づてに聞いたところによると

「海外でもうかってるから、国内のトラブルなんかなんでもない」

と言っているんだそうな。多分みんなそう考えているんだろう。そもそもCEOも全く反省していないし。というわけで

今回の問題で、財政的な問題では見えなかった内なる問題点が浮き彫りにされました。その部分を今、相当の力を入れて改革しています。

引用元:三菱自動車・益子CEO、「燃費不正事件」を語る (2ページ目):日経ビジネスオンライン

ぜひこの「相当の力を入れて改革している」の中身を聞いて欲しかったところだ。前のリコール隠しでは現場が疲弊するほどコンプライアンス研修をやらせたがなんの意味もなかったと聞く。おそらくいまやっている「改革」も「こういう無駄なことをやってはいけません」という貴重な例として世の中の役にたつのではないかな。