ビジョンの欠如
2017-08-24 07:22
「ビジョンを持つ」とは「何かいいことをしよう!」と叫ぶことではない。考えられる作業項目に明確なプライオリティをつけ、やることと、やらないことを明確にすることだ。信じがたいことだが、これを理解しない人の多さには驚く(このブログの内容は個人の意見であり、私が所属している団体とはなんの関係もありません)
Apple even looked into reinventing the wheel. A team within Titan investigated the possibility of using spherical wheels
引用元:Apple Scales Back Its Ambitions for a Self-Driving Car - NYTimes.com
Appleの自動車プロジェクトが一時頓挫したことは知られている。この記事が正しいとしてだが、それは「革新性の欠如」によるものではない。「ビジョンの欠如」によるものだ。プロジェクトTitanでは、何から何まで革新しようとしたと書かれている。車輪を平たいものから、球形のものに置き換えることまで検討したという。
こういう「新しいものをなんでも取り入れるプロジェクト」の末路は決まっている。崩壊だ。私のような古参のApple原理主義者ならば、CoplandというMacintoshのOS開発時にこういうセリフを聞いたことがあるだろう。「Coplandは新しいものをなんでもいれるゆりかごのようなものです」そしてそのOSは世にでることはなかった。
このプロジェクトに責任を持っていたのが誰か知らないが、この単純な原理を知らなかったのには驚く。全く新しい「上物」を試すのならば「土台」は実績があり、ちょっと古いけど信頼できるものにしなければならない。そうしないと爪先立ちで上物を作っている時に、その立っている土台が揺らいでしまう。Appleも過去にNewtonで痛い目に遭っているはずだが。
というわけで、Bob Mansfileldを引退生活から呼び戻し、自動運転にフォーカスさせることにしたのは正しい決断だった。というか最初からそのように「ビジョンを持った人間」をプロジェクト責任者にしろよ、と思うがそういう人はAppleでさえも滅多に見つけることができないだろうな。
My understanding is that it’s more like “Let’s get the autonomous shit down first, and worry about designing vehicles to put it in after that.” Eat the steak one bite at a time rather than all at once.
引用元:Daring Fireball: Some Comments Regarding The New York Times’s Report on Apple’s Titan Project
Appleは自動運転技術に対して投資を続けている。ということは車を作ることを完全に諦めたわけではない。Appleが自動運転技術を他社にライセンスするというのは考えがたい。となるといつの日かTitanはまた「四つの車輪をもった電気自動車」として復活し、世の中にでるかもしれない。そのころ「自動車業界」はどんな形になっているのだろう。
メルケル首相はドイツの週刊誌の最新号で、ガソリン車やディーゼル車の販売終了期限の設定について、「まだ具体的な年月を定めることはできない。だが電気自動車の充電インフラや技術に迅速に投資すれば、全面的な転換は構造的に可能だ」と指摘した。
ドイツの首相がこんなことを言い出した。安倍くんも何か言ってみてはどうかな?自動車業界から強烈な反発を喰らうけど、ここで何もしない、というのは間違った態度のように思うよ。