防災するのだ

2017-11-28 07:24

昨日防災専門図書館の見学会があったので行って来た。という時点でこれを読んでいる人の頭には?マークが浮かんでいると思う。そもそも「防災専門図書館」とはなんなのだ。

サイトはここである。防災に関することならなんでも収蔵している図書館である。地震雷火事などの災害だけではなく、最近日本では下火になっている公害に関する図書が一番多いというのが驚きでもあった。

とにかくこの図書館は「ああ、世の中は広い。私が知らない世界はまだいくつあるのだろう」という驚きに満ちている。そもそもこの図書館を運営しているのがどこかというと

公益社団法人全国市有物件災害共済会は、地方自治法第263条の2の規定に基づいて、全国の各市が地方自治の発展と住民福祉の向上をめざし、相互救済事業を実施するために共同で設立した公益的法人です

引用元:公益社団法人 全国市有物件災害共済会

要するに「市」が何かあったときのために共済組合を作っているとのこと。そこが運営している。かけてもいいが国民の99.9999%は「全国市有物件災害共済会」なるものの存在をしらないと思う。

さらに驚くのがここが開設されたのは昭和31年。終戦から11年後である。公害問題がクローズアップされたのは昭和40年、50年代だから図書に公害のものが多いのもうなづける。しかし

「足尾鉱毒事件全集」

が分厚い30巻の書物として、そして平成にはいってから出版されていることなど誰が想像しえただろう。それだけでなく、この事件で有名な田中正造の全集というものも分厚い数冊の書物として存在している。彼は

「お願いでございます」

と走るだけの人ではなかったのだ。

棚には様々な防災関連の月刊誌が並んでいる。「損害保険学会」とかそんな学会があったのか、という雑誌から消防士さん以外絶対読まないような雑誌がある。いったいこれはどこで売られているのか。聞いたこともない試験所も丁寧に製本した「年度報告」を毎年出している。これを読む人はいったい何人いるのだろう。

はてまた「ダム年鑑」という分厚い本が何冊も並んでいる。いったい中には何が書かれているのか。江戸時代の瓦版も所蔵しているのだが

「大阪でおこった3回の大火災」

の瓦版はいったい誰が何の目的で作り、そして誰が買ったというのだろう。当時から防災マニアがいたのだろうか。原子力安全白書が近年刊行されていない、というのはまあ知っている人もいるだろうが。

カスリーン台風に関する企画展示がある。日本にそもそも上陸していないし、来た時には994mbとか弱い台風だったにも関わらず千人を超える死者を出している。前線を刺激して大雨がふり堤防が決壊したらしいのだ。その2年前までは「一晩で数万人の死者」が毎週のようにでていた時代からなあと思ったりもする。

今でも東京の東側の0m地帯にはたくさん人が住んでおり、もし同じようなことが起こるとシン・ゴジラなみの騒ぎになりかねない。

とかなんとかとにかくデイリーポータルZが取材しないのが不思議なくらいの世界がそこには広がっていた。

少しまともなことを書く。

東日本大震災に関しても驚くほど多種多様な本が収蔵されている。そうした努力は素晴らしいことだが、問題はYoutube上のビデオだ。あれほど貴重な情報はないと思うのだが、今それを握っているのは米国の私企業。Googleが発狂した途端その情報は全て失われてしまう。あれをなんとかすることはできないのだろうか。あるいは「この世界の片隅に」を作った監督が集めた膨大な資料をここで保存することはできないだろうか、とかいろいろなことを考える。

とても親切丁寧に説明をしてくれた。しかしあまりこうした「素人の提案」を議論する余裕はなさそうだったのが残念ではあった。