経営判断

2018-05-08 07:36

ある人からこのニュースに関するコメントを求められた。

イオニアがカーナビ苦戦で業績修正、赤字は拡大へ
パイオニアは4月26日、2018年3月期(17年4月~18年3月)の連結業績予想を下方修正した。売上高は2月に発表した予想からさらに460億円下回る3654億円、営業利益は12億円、当期純損益は71億円の赤字を見込み、前期比で減収減益となる。カーナビ、カーオーディオなどのカーエレクトロニクス事業が不調だった。

引用元:痛いニュース(ノ∀`) : パイオニア「カーナビが売れない! なんで?」 カーナビ苦戦で71億円の赤字 - ライブドアブログ

この記事の下に並んでいるコメントを見よう。

今のご時世で純正以外のカーナビが商売になると思ってる経営陣って……

引用元:痛いニュース(ノ∀`) : パイオニア「カーナビが売れない! なんで?」 カーナビ苦戦で71億円の赤字 - ライブドアブログ

今こういうコメントをするのは、私でもできる。問題は「では他にどのような道があったのか?」である。特にパイオニアは以前から意欲的に新しいカーナビの試みを続けていた。すごいな、と思ったのはこのエアナビである。

2002年
世界初の通信カーナビゲーションシステム「エアーナビ AVIC-T1」を発売。
最大144kbpsの高速通信を用いて専用サーバーにアクセスするクライアント/サーバー型システム。CDMA2000 1X規格通信モジュールを内蔵し、検索やルート探索などのカーナビゲーションとしての処理はサーバー側で行なう。地図データアップデートも通信経由で行なわれる。

引用元:カロッツェリア (AV機器) - Wikipedia

カーナビの未来は通信で接続されたサーバーにある、と正しく認識しており通信モジュールまで格安で提供していた。しかもこれが発表されたのはiPhoneに先立つこと五年前である。

取り外して、旅館でゆっくり目的地の設定をし車に取り付けて走るなんてことも可能だった。今はあたりまえと思われるこういう使い方は当時信じられないほど画期的だったのだ。

ではその評価はどうだったか?

エアーナビには元々ユーザー用のIDとパスワードがあるんですけど、そのパスワードとは別に更新用のパスワードというのが必要なのです。
ユーザー用のIDとパスワードでログインして更新用パスワードを取得するわけです。
あー、面倒。

引用元:エアーナビのマップチャージはかなーーり面倒。何故に更新用パスワードが必要なのか意味不明。:沖縄好きでソニー好き♪:So-netブログ

悪名高い地図更新も3年間は無料という触れ込みだった。しかしそれを実際にやろうとするととんでもない手間がかかったようだ。

記憶装置の容量が小さかったこともあるだろう。ここに引用したような「何重ものパスワード」は私の想像によれば、地図データの権利をもっている会社を納得させるためのやむおえない処理だったのではなかろうか。

つまり

私のような人間が考える対策、投資はちゃんと行っていたのである。しかしおそらく彼らもiPhoneが発表された時自分たちの事業の死を想像したのかもしれない。

いや

まだやれると思っていたのだろう。iPhone発表後3年もたった2010年、富士通ガラケー担当者がが「スマホのシェアなんてまだ少ないですよ」と断言していた。そうやっているうちに事業はいつか終焉を迎える。

何がまずかったのか?

まず確実に言えることは

専用機メーカーの開発者は自分で使ったことあるのか
と、思うような酷い操作性

引用元:痛いニュース(ノ∀`) : パイオニア「カーナビが売れない! なんで?」 カーナビ苦戦で71億円の赤字 - ライブドアブログ

これである。しかしこれも「仕方がない」のだ。毎年新製品を出そうとすれば、大幅な操作の変更はできない。既存ユーザからもクレームがくる。だから今までのソフトを改修し改修し毎年がすぎていく。それは掘っ建て小屋の空いた穴をつぶしていくような作業だ。

そうしている間に隣には鉄筋コンクリート、ガラス張りの高層ビルが建築される。

思うに

彼らに足りなかったのは徹底的な狂気だったのだと思う。GoogleがMapを無料で公開した時には驚いた。しかし今にしてみればそれが彼らにとって必要欠くべからざるサービスであったことを知る。地図メーカーと協議して、何重ものパスワードを設定せざるを得なかったパイオニアと、無茶苦茶な要求を飲ませ(想像)、無料で公開したGoogleにApple.

IT業界だけが全てではない。しかしこの分野では日本式「和をもって貴しとなす」は機能しないのではなかろうか。

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しかしまだ希望はある。主力事業が立ちいかなくなった=企業の死か?そうではない。

BlackBerryは2016年にライセンスモデルに柱を移し、BlackBerryのセキュリティ要素を加えた、AndroidをベースとするBlackBerryブランドのスマートフォンをOEMで提供している。

引用元:ASCII.jp:「ハード事業では失敗した」 BlackBerry幹部が語るライセンスと安全なAndroid端末戦略での復活 (1/2)

同じように、というかもっと正面からiPhoneとAndroidに立ち向かい、ふっとばされたBlackBerryはソフトウェアのライセンス企業として復活しているのだ。あまり報道されないが、これは驚くべき偉業。

つまり

パイオニアやクラリオンの社員だからといって悲観する必要はない。「優秀な経営者」さえいれば復活は可能かもしれないのだ。「優秀な経営者」さえいれば。

どう?未来が明るく見えない?