古老の知恵
2018-10-01 07:28
年をとると自分が発見したことを得意げに語ることが愚かな行為であることを学ぶ。そして困ったことに私は学んだ大切なことをすぐに忘れる。
グーグルでは2007年から、「Googlegeist(グーグルガイスト)」という全従業員を対象にしたアンケート調査を毎年行っている。
(中略)
良い結果も悪い結果も、全従業員に公開される。これにより、各チームの従業員とマネジャーは次の年の評価に向け、調査の中でスコアが低かった部分を認識し、改善するよう取り組むことができる。とりわけマネジャー陣は真剣に毎年の調査結果を受け止めているし、それを見ながら会社をよりよくする策を練っていく。
確信はないが、世界中の国でアンケートをとれば最も幸福な国は北朝鮮ではないかと思う。アンケートが示すのは
「従業員がこういう状態にある」
ことではなく
「アンケートに対してこういう回答があった」
でしかない。不思議なことにこの単純な原理を忘れた方が人事担当者は幸せになれるようだ。
私は常に他人の幸せを願っている。だから会社が実施するアンケートに答える際には「ここは北朝鮮だ」と自分に言い聞かせる。
さて、グーグルの人事担当者はそこまで楽観的ではないようだ。
回答内容が真実かどうかを証明するのはなかなか難しいが、グーグルガイストを10年間運営する中で、2つの異なる調査方法で回答内容が変わるかを検証したことがある。一方は、100%匿名での調査。もう一方は、機密性の高い状態の調査だ。後者はつまり、個人までは特定できないものの、高度に分析すればどのグループが発言しているかはだいたいわかる、というレベルである。
2つの方法を試した結果、実は両者の間に回答の差は現われなかった。グーグルの従業員はそもそも、自分の意見をしっかり表明する傾向が強いのかもしれないが、どんな聞き方であっても、ある程度正直に話してくれると考えられる。一方で、グーグルガイストの結果は、それ以外の社内調査の結果ともつねに比較している。回答の傾向に差が出ていないか、従業員の声を正しい形で吸い上げられているかを確認するためだ。
彼らは自分たちのアンケート結果が「北朝鮮の世論調査」になっていないか常に検証しているという。もっと単純に幸せになればいいのにねえ。
従業員満足度を上げるのは簡単だ。従業員にアンケートをとり、その結果を従業員にフィードバックする。結果を教えるのではない。結果が「悪かった」部署に処罰を下すのだ。グループ内での「反省・改善」ミーティングを強制し、マネージャーに反省文を書かせ研修に何度も参加させる。そうすれば人間は偉大な学習機能を発揮し
「アンケートには満額回答をした方がよい」
ということを学ぶ。
ある日読んだ本にこんな小話が載っていた。「下から上への批判、というのは空に向かってバケツの水をかけるようなものだ」
空に向かって勢いよく水を放り投げればどうなるか?そのまま自分に水がかかる。
もちろんこれは私が友人から聞いた話であり、私が体験したことではない。想像だが、三菱自動車内でもこんなことが起こっていたんじゃなかろうか。問題はトップにあるのだが「コンプライアンス遵守意識が低い」とアンケートの結果診断された部署には「コンプライアンス研修」への参加を強制する。そうすれば皆「アンケートにどう回答すれば点数があがるか」だけを考えるようになる。
今日もアンケートが飛び交う。私は常に満額回答。時々期限が悪い時に筆が滑る時がある。そしてすぐ後悔して結果を修正する。