空疎なブームが過ぎ去って
2019-12-17 07:31
第3次人工知能ブームは過ぎ去り、今や地に足がついた機械学習についての競争が起こっている、、はずだ。多分。しかしまだその名残でこんな記事もでる。
【12月14日 AFP】2020年にドイツの作曲家ルートウィヒ・ベートーベン(Ludwig van Beethoven)の生誕250年を迎えるに当たり、人工知能(AI)を使って未完の交響曲第10番を完成させるプロジェクトが進められている。
しかしこの短い記事であっても、内容は示唆に富んでいる。2012年以降AIと呼ばれているものは、細かい範囲でのパターン当てはめだ。そのため長い曲を作曲させようとするとこうなる。
プロジェクトチームによると、AIが数か月前に完成させた最初の作品は機械的過ぎる上に反復が多過ぎるものだったが、最新版はそれよりは期待できそうだという。
(中略)
これまでにも、ヨハン・セバスチャン・バッハ(Johann Sebastian Bach)やグスタフ・マーラー(Gustav Mahler)、フランツ・シューベルト(Franz Schubert)の作品を基に同様の試みが行われてきたが、見事な出来栄えと言えるものではなかった。今年完成したシューベルトの交響曲第8番については、複数の批評家がシューベルト作品というよりむしろ米映画のサウンドトラックみたいだと評していた。
今の機械学習では、大きな構造を理解することができない。それゆえ何度も同じパターンを繰り返す。あるいは映画音楽を学習させたのなら、そのようになる。
もっとも的確な批判はこのブックマークコメント。
そもそもベートーベンの交響曲1-8から交響曲9番が作れるのかな?合唱を入れようぜ的発想に至れるんかね?
引用元:[B! 人工知能] AIがベートーベンの未完の交響曲第10番を完成へ 写真10枚 国際ニュース:AFPBB News
1−8を学習させて、9番を作れば「1−8をなんとなく混ぜたようなもの」ができるのがセキノヤマである。こういう試みをやるのは意義があるかもしれないが、真面目に受け取るのは勉強不足であり、人間の創造性というものをなめているとしか思えない。
ブルックスのエッセイを読んでいておもしろい表現にであった。イルカが作る人工知能という表現。イルカが、「ここまでできれば知能の再現ができるじゃね?」と思ってあれこれ努力するというもの。人間からみればそれはあまりに無知で無謀な試みとしか思えない。
しかし今人間がやろうとしていることが、それと同列でないと誰がいえよう。そもそも知能がなんであり、そこにたどり着くまでどれだけの道のりがあるか誰にもわかっていないのだ。しかしそれについて書くと金がもらえるというのはどういう構造なのだろうね。そうした問題について真面目に書いた(つもり)の私の本でも千円にはなったか。