N回目の「幻想のものづくり大国」
2023-03-23 06:34
遠い昔トヨタがTeslaに出資していたころ、トヨタグループの人から「Tesla?ああそうだね..」というやや侮蔑したような言葉を聞いた。確かにその時のTeslaはトヨタ様から見れば「全くなっちゃいない」会社だったかもしれない。
なのだが、Teslaはまだ生き残っている。あとから電気自動車に参入したベンチャーが次々コケても生き残っている。そこにこの記事を読んだ。
まったく新しい車体組み立てプロセス、希土類を使わない高性能モーター、SiCの使用量を1/4に減らしたパワー素子、そしてドライ電極を使った電池……。どれも技術的難易度は高く、実現は容易ではない。実際、エンジニアなら、どの課題であっても「やれ」と言われたら尻込みしてしまいそうな課題ばかりだろう。この記事の冒頭で「テスラで働くって大変だなあ」という感想を抱いたと書いたのはそういう思いからだ。それでもテスラが発表したということは、すべて実現のめどが立っているということだろう。実際、実現困難とみられていたドライ電極については既に量産が始まっている。なぜテスラはできるのか。テスラはエンジニアをどうマネジメントしているのか。いま、筆者の頭の中はクエスチョンマークだらけである。
正直言って私にはここに書かれていることの妥当性が評価できない。なのでとりあえず「書かれていることは正しい」と想定して話を進める。
今の会社に来てから「デザイン思考」なる怪しげなフレームワークを使わされている。そしてその場で思いついたことをペタペタ付箋に貼ればすごいアイディアができます、という信仰を強制されている。
しかし
本にも書いたがそれは大嘘である。引用した文章にあるような「技術的なブレークスルー」が付箋ペタペタでできるのか?できないとすれば何が必要なのか?日本の自動車会社のエンジニアにはテスラのような革新が達成できているのか?(私は彼らと彼女たちが「できている」と答えることについて確信を持っているが、彼らと彼女たちが嘘つきであることにも確信を持っている)
これがかつて「ものづくり大国」などと自称していた国の現状だ。
というかなぜ日本からはまともなハードウェアのベンチャーがでてこないんだろうね?成功失敗を問わなくても、「これぞベンチャー」という試みがあるべきだと思うのだが。