どこまで責任があるのか

2023-06-13 14:00

ジャニーズ事務所の社長だかなんだかが同性愛者で、自分が気に入った男のをつれてきてタレントにしている、と聞いたのは私が中学か高校の頃だったか。フォーリーブスの誰かが告発したのも多分それからあまり後のことではない。つまり私のように芸能に興味がない人間でも知っているほど「公知の事実」だったわけだ。しかしそのことを誰も非難できない。なぜならば「声をあげたメディアにはジャニーズが出演しなくなる」からだそうな。

なんだそのへんな「事務所」というものの存在は、と思った。

そして

それは「そういうもの」として誰もが見てみぬふりをしていた。その社長だか誰だかが死去してようやくことが表沙汰になった。

SMAPという人たちが事務所に反旗を翻したとか何かにともない異様な光景が繰り広げられたことは記憶に新しい。「事務所」というものはそんなに強力な権力を持っているものなのか。

芸能界はヤクザのフロントエンド、なんて言葉はせいぜい揶揄程度にしか言われておらず、大半の人も「まあそうなんだろうけど」ぐらいだった思うが、今回のスマスマ謝罪会見で「あ、芸能界はヤクザなんだ」と痛烈に知れ渡り、それを取り巻く芸能報道もヤクザの太鼓持ちなんだと子供でも分かる状況に。

その異様な光景に正面から声をあげたメディアはなかった。そしてその性暴力が正面から語られるには、海外のメディアの力を借りなければならなかった。それに対するTV曲のコメントがこれである。

■櫻井翔と有働由美子アナの発言全文櫻井翔「先週もお伝えしました通り、このようなことが二度と起こらない態勢を整えないといけないと思います。そのために、どこがどう問題でどう解決すればいいのか、きっちり検証することが、まずは大事だと思います」
有働由美子「そして、その検証の先に、ジャニーズ事務所がどう実行していくのか、私達『zero』もしっかりお伝えしたいと思います」

なんといってもすごいのはシレっと共犯者から「検証者」に身をかわして見せるTV局。ジャニーズ事務所に逆らって自分たちの利益が減ることが恐ろしく、何も報道してこなかったことはあっさり忘れて見せるところがさすがTV局。有働氏もこういうセリフを人前で吐くことができるプロ根性を褒めればよいのか、それとも何も感じないほど頭がマスコミなのか。

ふと考える

じゃあ誰にまで責任が及ぶのか?そういう事務所だと知って金をつぎ込み続けたファンに責任はあるのか?私のように何の興味もないが、何もしなかった人間に責任はあるのか?

などと考えていくと、

ナチスドイツによるユダヤ人虐殺に、「普通のドイツ人」はどこまで責任があったのか、という議論を思い起こしたりする。

ユダヤ人が逆説されていることに薄々気がついていたドイツ人もおおかろう。自分の命を危険にさらしてまでヒトラーの暗殺を企てた人もいる。しかし大多数の国民は「みなかったこと」にしていたのではなかろうか。そして彼らには果たして責任があると言えるのだろうか。

などと考えながら

どうせこの件もそのうちうやむやになるんだろうな、と思う。暴いたところで誰も幸せにならない。今の通りの事務所というヤクザが仕切る世界でいいじゃないか、となるのだろうな。

かくして我が国の「エンタテイメント社会主義」は存続する。視聴者が喜ぶものではなく、供給側である事務所が決めたものを消費させられ続ける。いや、私はもうみないから別にいいんだけどね。