AIが貧困を救う-思ってもみなかった形で
2023-07-08 07:40
AIによって人類の危機がどうのこうの、という人については先日書いた。しかしAIは実際に社会に生活にインパクトを与えている。先日こんな記事を見つけた。
貧困地区として知られた永和県にAI訓練センターが設置されたことにより、町の経済が変わった。出稼ぎに行く必要がなくなり、地元で子どもと一緒に暮らすことができ、都市よりも高い給料がもらえるからだと暸望智庫が報じた。
産業があまりなく、人件費の安い地域にコールセンターを設置するのは、普通に行われていることである。これはそのAI版と考えればよかろう。
コールセンターとは違った形ではあるが、AIは確かに仕事を生み出している。本当に皮肉な話だ。コンピューターは人間のような創造性を持たないから、単純作業を奪っていくと多くの人が予測した。生成AIが実際に人間の仕事をどれくらい奪っているかは議論の余地があるところだが、「あたりまえの文章を量産する」のが目下のところ一番の用途。つまり創造性をある程度有する仕事を奪っている。そして「データをひたすら分類する」という一見単純作業とも思える仕事(実はそうではないのだが)を人間にたいして生み出している。
これを持って「AIが高度な判断をして、人間には単純作業しか残されない」と考えるのは的はずれである。つまり今のAIは人間の膨大な作業なしには動けない。自分で勝手に学習し、作り手の意図を超える成果を挙げるAIはごく限られた領域でしか存在していない。先ほどの命題「自分で勝手に学習し」はまだまだ誰もやり方すらわからない。
こうやって「現れては消え多くの働き口を作り出す」仕事は過去にいくつも存在していた。その昔オフィスには「ワープロ係」の派遣社員がいた。この仕事もそうした仕事の系譜に連なるものなのだが、「脅威論」が横行するAIを支えるそれ、というのが面白いところだ。