題名:Clinton-part21

五郎の入り口に戻る

日付:2003/2/10

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2003/2/10-In Retrospect

今我々はどこにいるのだろうと思うことがある。

起こった事を後から振り返り「あそこでああすればよかった」だの「こんなに明白な兆候を読みとれなかったとは」ということは実にたやすい。第一にそれがどんな結果をもたらしたかを知った上で語れるからであり、第二にその「ああすればよかった」が正しいか間違っているかは決して明らかにならないからだ。「架空戦記」なる文章を書く人間が後から後からでてくるのも、それがあまりに容易だからであろう。

国連に提出された報告書を読む限り一番自然な解釈というのは

「イラクは生物化学兵器を保有している。核兵器は保有していない」

だと思える。そうであればいかなる選択肢があるというのか。戦争絶対反対、そのスローガンはまことに結構。しかし9.11それに続く一連のテロ(あるいは地下鉄サリン事件)は

「テロリストは人を殺すためなら何でもためらわずにやる」

ということを全世界に示したのではなかったのか。米国は本土を攻撃された事実に直面し、安全保障について明らかに一歩踏み出そうとしている。すなわち自国に対する攻撃を可能性のうちに戦争によってでも排除するという方向に。

しかしイラクに住む人達のほとんどに何の罪もないのもまた確か。市街戦で生物、化学兵器が使われたとしたら米軍は身を守れるとしても市民はどうなるのだ。では他に選択肢はあるのか。フセインが亡命しないとすればどうすればよいと言うのだ。

今まで示された情報からするに、米国は自らの計画に従って着々と事を運んでいるように思える。査察だ決議だは行われているがそれと平行して計画的に兵員を増強している。この先に何が待っているのか私にはわからない。英国首相Blairはこう言った。(Independent.co.ukより。)

"When people say to me why are you risking everything in a sense, politically, on this issue I say to them in all honesty I do not want to be the Prime Minister when people point the finger back at history and say you knew perfectly well those two threats [weapons of mass destruction and terrorism] were there and you did nothing about it."

今から過去を振り返りチェンバレンにあれこれ言うことなら私でもできる。イラクを巡る情勢の結末が明らかになってからこの文章を読み返せば

「なんと愚かで目が見えなかったことか。決まっているじゃないか」

と思うのだろうか。しかし今不確かな未来に向かって決断を下すのは容易なことではない。いっその事紋切り型のスローガンに隠れて思考停止したほうが楽ではないかと思うこともある。

そうこうしているうちにPowellが国連でプレゼンテーションを行う。事前に報じられていた内容以上の物はなかった、ということは米国はこの情報で各国がどのように反応するかも計算していたいことになる。イラクはさっそく全面否定した。理屈はどこにでもくっつけられる。しかし撮影される時期を計算できないU-2の飛行をイラクが拒んでいること。それにこれまで国連に提出された事実を考え合わせるとイラクは

「無実を叫んではいるが周りからは次第に人が遠ざかり部屋に一人残されている」

状態に追い込まれつつあるようだ。

隣の国に目を移せば、親愛なる将軍様は相変わらずの無軌道ぶり。自分が合意を破ったことを認めた時点で(その前からだが)全く信頼を失った国家が何をいっても誰も真に受けない。仮に何かの間違いがあって米国との間に「不可侵条約」が結ばれたとしよう。それが何の役に立つというのだ。米国の攻撃を受けたときに「米国は条約を破った」と訴えるとして誰が耳を貸すというのか。などと考えているといくつかの言葉が頭に浮かぶ。

孫子に言う

「ことばつきは勇ましくて侵攻してくるように見えるのは、退却の準備である。」

あるいはもっと身近な言葉で

「弱い犬ほどよく吠える」

これらの言葉を思い出すとき少しは気が楽になる。将軍様だってフセインだって全く馬鹿じゃないんだからそんな不合理な行動はとらないよ、と自分に言い聞かせようとするが、かつての(あるいは今もか)の我が国の行動を思い返すとき、常にそれを期待するわけにはいかないことに気がつく。戦前の日本を外から見て

「いくら日本人でも、対米戦争に勝算がないことくらいわかってるはずさ。南部仏印進駐なんてのは単なる脅しだよ」

と言う言葉は、当時で有れば合理的に聞こえたに違いないのだ。

さてこの状況下、韓国は独自の立場を示そうと特使を派遣してみたが、将軍様は視察が忙しくて会えないと言う。これに対する反応や如何と思い韓国のニュースサイトを見てみる。するとこの件もさることながら、南北首脳会談の前に230億円の金が北朝鮮に送られたことが大きな問題となっているようだ。この意見は誰かが述べ即座に否定されたそうだが

「南北首脳会談を金で買い、ロビー活動でノーベル賞を受賞した」

とは私のような一般市民誰もが思うこと。今から考えれば南北首脳会談はなんの役に立ったというのだろう。230億もの金は何に使われたのだろう。このような状況でも頑なに「太陽政策は有効だ」と叫び続けるその様は滑稽ととればいいのか、あるいは他に選択肢がない悲壮な姿をみればいいのか。

などと書いているとどうにも気が滅入ってくる。とりあえずお金が増えればハッピーな気分になるかもしれん。とはいっても銀行に預けて置いても利子はつかないし。ここが底だと思って株でも買ってみるか。株も後からグラフを観て

「ここで買っておけば今頃億万長者だったのにな」

ということは実に簡単なのだが。


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注釈