題名:カレーの道

五郎の入り口に戻る

日付:2003/5/3

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カレーショップ山小屋[店舗](2003/6/22)

というわけでマジックスパイスは横浜カレーミュージアムから卒業してしまった。しかし嘆いてはいられない。

そう。これまでカレーミュージアムにはいると自動的にマジックスパイスに足が向いていたがこれからは他の店にも行けるではないか。というわけで今日はその第一弾。ここはいつ来ても「待ち時間無くご利用いただけます」の店だ。さて、どんなカレーが出てくるのだろう。

カウンターに座るとしばし待つ。一番スタンダードと思われる「山小屋ビーフカレー・トッピングに納豆」を頼む。しばし待つ。調理をする人とウェイトレスがやりとりするところに一番近いカウンターに座ったので彼らと彼女たちのやりとりがよく聞こえる。なかなか忙しそうだ。そのうち「この人達は単に雇われて働いているだけだ」と思い出す。何故そう思ったのかわからないがこの印象はおそらく正しかったのだろう。

そのうち「お待たせしました」という言葉と共に私の前にはカレーだけが置かれる。これでどうしろというのか。「水を下さい」と言う。すると相手は水差しを持ってきた。そこで初めて水を出していないことに気がついたらしい。「すいません」と3度ほど言ってコップを持ってくると立ち去ろうとする。少し離れたところにたくさん並んでいるスプーンのかごを指さし「これを使えばいいのですか?」と聞くとようやくスプーンの入った籠を前に置いてくれた。

やれやれ、これでようやくカレーが食べられる。頭を振り気分を切り替えるとスプーンを握る。ウェイトレスがその義務を果たさないのはカレーの罪ではない。

机に「まずルーだけを食べ、次に納豆を混ぜて食べる」と書いてあるからその通りにする。ルーはどこかで食べたことがあるような味だ。悪くないが好きな味でもない。では、ということで次に納豆を混ぜてみる。というか全体をぐちゃぐちゃする。すると確かに味はよくなった。納豆がねばねばしているのもなんとなく面白い。

というわけで少しの満足と共にカレーを食べ終える。しかしそれは全体の印象をひっくり返すほどではないし、わざわざ電車に乗ってまで食べたいというほどの味でもない。いつも待ち時間が0なのにはそれだけの理由があるということか。


マジックスパイスのチキンカレー[店舗](2003/6/14)

ふと気がつけばもう6月である。6月、、6月、、俺は何を忘れているんだ。考えること数分、私はぎゃっと叫ぶ。横浜カレーミュージアムが改装オープンしたのは3月。もうそれから3ヶ月ではないか。ということはマジックスパイスは閉店してしまうのだ。

泡食ってインターネット上の情報を漁ると6/19までとのこと。もうそんんなに日がないではないか。これはチャンスがあれば逃すわけには行かない。行かなくちゃ。食べに行かなくちゃ。

というわけで今日夕食を外で食べる日。足は自動的に横浜カレーミュージアムに向かう。エレベータの入り口にある「待ち時間表示」によればマジックスパイスの待ち時間は10分。この前もそう書いてあったが店内はがらがらであった、などと根拠のない楽観的気分に支配されつつ店を目指す。するときっちり列があるではないか。ううむ。

暴れてもしょうがないからおとなしく一人列に並ぶ。一人だから暇である。周りの観察くらいしかやることがない。しかし見事なくらい男女のカップル、もしくは女性二人連ればかりである。をを。あそこに私のようなちょっと怪しげな中年男が一人でいる。そうだよ。カレーの道を歩む者は孤独なのだ。それをわかっている人が私の他にもいるではないか。

などと考えた次の瞬間、その男の後ろに連れらしき女性がいることを知る。ええい、このにやけた中年男。貴様などにカレーの道がわかってたまるか。

などと意味もなく憤怒の炎を燃やしている間に私が列の先頭になった。女性が「あちらの奥にどうぞ」と言ってくれる。カウンター席で両隣は若い女性二人連れだ。あの間に疲れた中年男一人ではさまれというのか。

オーダーした後もやることがない。聞き耳を立てているわけではないが、両隣はとてもにぎやかだ。右隣の女性はなにやら仕事の愚痴を言っている。もう絶対やめる。あんな仕事続けられない。話を遮るがごとくカレーが運ばれてくる。一口すする。あー、全然平気。普通に辛い。そんな声を聞きながら私はひとりほくそえむ。ふふふ。お嬢さん。ここのカレーはそのような生やさしい物ではないのだよ。きゃらきゃら話す女性達に挟まれた中年男はそんなことを考え続ける。カレーの道は孤独の道。両隣の明るさなど知らぬ。ただ一人でカレーと相対するのだ。

自分の前に運ばれたカレーを食べながらも隣の会話は耳に入ってくる。一部上場企業だと「そういう電話はお取り次ぎできないのですが」とか丁寧だけどー。商店のおやじとかにかけると奥さんがでてきて「あなたはどういう関係ですか」とかうるさくてー。もうやってらんないー。スプーンが進むにつれ愚痴のペースは落ちてくる。そしてしばしの沈黙の後ひときわ大きな声が聞こえる。

「ちょーからい。ちょー鼻水でる。水飲むともっと辛くなるけど水のまずにいられない」

そうだよお嬢さん。人はカレーの前に立つとき、ただ心を虚しくせねばらない。邪心を持つことをカレーの神は許さないのだ、などと思っているとまた愚痴が始まった。あたしやりたいこといっぱいあってー。留学とかー。大学はいりなおすとかー。しかしそうした言葉に「ちょーからい」という叫びが混じる。「ここ期間限定でよかったー」などと言っているがそのうち君も悟るだろう。なぜかまた食べたいと思ってももうこのカレーは食べられないのだよ。ああ、「東京のどこかに夏に開店」という支店はどこになるのか。そして「夏」とはいつのことなのか。


とろたまカレー[移動販売](2003/6/12)

[前回までのあらすじ]

とろにくカレーを注文した男は、その肉の量に感動を覚える。期待に胸をふくらまして食したところ「肉に味がない」という事実を知り愕然とするのだった。

というわけで本日はメニューの一番上に書いてある「とろたまカレー」に挑戦である。小雨降る中傘もささず注文する私に

「今日は雨ですからウーロン茶か麦茶をサービスします」

と言ってくれる。ああ、ありがたや。しかしここで気を引き締めなくてはならない。こうした商売上の心遣いとカレーの味は必ずしも比例しないのだ。

というわけで受け取ったのがこのカレー

ご飯の上にドライカレーと呼ぶのだろうか、、何かが載っており、さらに真ん中には温泉卵がある。大坪家ではドライカレーと言えばカレーピラフのようなものを指すのだが、このカレーだって確かに液状ではないからドライだ。ええい、逡巡している場合ではない。私はスプーンをつかむ。

一口食べる。ほお。二口三口とほおばる。温泉卵がくずれているがその混ぜ具合をあれこれ変えて食べてみる。不思議なことだが味がほとんど感じられない。卵を混ぜるとカレーの味がマイルドになるのはいいとして、これはどうしたことか。だからといってまずいわけではない。味は無いのだがスプーンは進んでいる不思議な状態である。

頭の中に「?」マークをたくさん浮かべたまま食事は終わった。サービスのウーロン茶をごくごく飲む。結局辛かったともなんとも思えない。こんな不思議なカレーは食べたことがない。ユニークと言えばユニーク。それ以外に評しようがない。またあの青い車をみかけたら、、どちらを頼もうか。それとも別のカレーを食べようとするのだろうか。



とろにくカレー[移動販売](2003/5/29)

さて、今日は何があるかな、と思いなんとかホテルの横に行く。今まで食べたことがあるカレー屋は来ていないようだ。そもそもカレー屋自体来ていないか、、と思っているとちゃんとあるではないか。はためくのぼりにカレーの文字が

値段表を見てみると一番上にあるのが「とろたまカレー」。この「たま」とは温泉卵のことである。前の人がこれを注文しており、大変興味深いカレーであるのだが、私が注文したのは2番目にある「とろにくカレー」である。やわらかく煮た肉がはいったカレー。をを、これは期待が持てそうではないか。

注文すると彼はクーラーボックスを開ける。カレーと肉が別の容器に入っている。空の容器にすくった肉をいれる。その上にカレーのルーをかけ容器一杯にする。100円でお茶の缶を合わせて売っているのもありがたい配慮である。これは期待がもてるかもしれない。

並べてみるとこんな感じだ。スプーンに福神漬けが張り付いているのもパッキング時の省力化という点からいい考えだとは思う。はがすのはお客の負担になるのだが、まあ細かいことはよい。この写真だと具が何もないように見えるが

ご飯の上にのっけるとこんな感じである。四角くきらきら光を反射する肉がまぶしい。私は期待に胸を膨らませてスプーンを握る。

食べてみると一瞬「これはハヤシライスか?」と思う。あまり辛味がなく、シチューのような味わいだ。いやカレーだ。カレーのはずだと思いパクパク食べる。ほれこの大量の肉がうれしいではないか、と自分に言い聞かせるのは必ずしもそう考えていないから。確かに肉はしっかりはいっており、歯ごたえはあるのだが味がしない。なんだこれは。

かくして私は少し静かな気持ちになって食事を終える。いや、きっとメニューの一番上に書いてあった「とろたまかれー」あれこそがこの店の決定打なのだ。そうに違いない、と気持ちを前向きに持とうとするのだが。


ポークとジャガイモのカレー[おうち](2003/5/24)

家でレトルトでないカレーを食べるのは久しぶりである。明日は人前で「日本印度化計画」を歌うから景気づけになるではないか、というのは後付の理由だったと思う。

作り方に関して、ルーか、それともスパイスを混ぜた物かと問われたからルーでよいよ、と答える。今我が家は何かと忙しいのだ。そして私は時々鍋を見て焦げないようにかき回す役を仰せつかる。ちょっとパソコンいじっていて「大丈夫?」と聞かれ駆けつけたときには鍋の下半分が結構重くなっていた。危なかったのかもしれない。

さて、そんな経緯を経てできたのがこのカレー

いただきまーすと言ったあと二人で箸というかスプーンをつける。最初の二口くらいは無言。どうも味が薄いのではないか、と言う。具を多くしたからその分カレー粉をいれたのだが、と言う。確かにぴりぴりするが味が薄いというのも本当かもしれない。

思えばDetroitに幽閉されていた頃、野菜不足を補うためにタマネギとにんじん(小指見たいに細いやつ)をしこたま放り込んだカレーはやっぱりこういう味がしていたなあ。あれは味が薄かったか。でもここまで豚肉が柔らかくはなかったよなあ。カレーを作った人は今ひとつ不満のようだが私は至極満足のうちに食事を終える。しかしカレーを食べた幸せに浸っていられる時はほんの一瞬。すばやく皿を水につけると今度は皿洗いだ。明日歌う日本印度化計画を口ずさみながらごりごり皿を洗う。


癒しのスパイスカレー[移動販売](2003/5/23)

さて、今日も昼はカレーにしようと思いいつもの場所に行く。先日食べた「グルメカレー」の車があるが客は誰もいない。もう一台止まっている車はカレー専門店ではないようだが、とはいって同じところで2回食べるのもなあ、と思い首を回す。すると車はないけど、なにやらカレーを売っているとおぼしき女性が。

近寄ってみればクーラーボックスの中にすでにパックし袋にもいれたカレーを詰め込んでいるよう。お客さんが来るたびにその中身を渡している。さて、写真を撮ろう。

「あの、この看板の写真とっていいですか」瞬間相手がとまどった表情を見せる。これはまずい。

「いや、あのサイトにカレーの感想を書いてるんですよ」

相手はさらにとまどった表情を見せる。「サイト?」そうか。サイトという言葉は確かに普通の日本語にはない。いやインターネットではははは、と言うと相手はなんとなく納得してくれた。

聞くとここのカレーは「スパイス中心」だという。それは何ですか、と聞けば、ルーを使わずいためたタマネギにスパイスを加えた物だとのこと。それ以上何か聞こうとすると「まあ食べてください」と言われる。Proof is in the curry.600円払うとクラーボックスから取り出された袋を受け取る。

さて、と取り出したのがこのカレー。サラダと称する物はひじきであり、ごまのようなドレッシングが付いている。そうか。ひじきってごまだれをかけるのかと思いじゃらっと開ける。ここで気がつく。先割れスプーンでこのひじきを食えというのか。ちょっとこれは無理ではないかと思っている間にあらかた食べてしまった。

さて、ということでカレーに取りかかる。言われたおりルーがはいっていないであろう、さらさらしたカレーにバラバラになったチキンが入っている。食べてみるとなかなか絶妙な味加減。辛すぎず甘くなく、いやされているかどうかは定かではないが、とにかくおいしい。元々私はチキンカレーが好きだし、チキンのばらけかたもなかなかよろしい。

というわけでご機嫌のうちに食べ終わる。財布をあけて気がついた。10枚たまったら一回只だか割引だかしてくれる券をもらっていたのだった。



グルメカレー[移動販売](2003/5/21)

いつも昼ご飯はコンビニで買ってきたおにぎりですます。その日も昼ご飯を30秒ですませた(おにぎり一個かじるだけだから)まだ昼休みの時間はいっぱいある。いつもは昼寝をするのだが、この日は銀行にいきお金を振り込んだ。帰り道、近くのビルの横に車がとまりカレーを売っていることに気がつく。ああ、ここにもカレーが。その瞬間私は決意する。明日はこのカレーを食べるぞ、と。
さて翌日。カレー屋があるだろうかと思ってのぞくと、昨日とは別の店(というか車)がとまっている。どうやらのぼりの布が棒にひっかかっているらしく、なかなか開店しない。もう一軒(というか一台)弁当屋がでているのが、私の目的はあくまでカレー。のんびりまつ。眼があうとおにいさんが「すいませんねえ」という。
準備が終わりそうな気配がしたので、車の後ろに立つ。するとすぐ後ろに誰かが並び始める。私は多少の気後れを感じる。目の前ではおにいさんがコンロにかけた鍋をかき回している。暖まるまでにどれほど時間がかかるのか。私はせっかちだからこうやって早く並んでしまうが、後ろにたった人は事情を知らぬのではないか。

こんな心配をしていた時間がどれくらいだったのかは知らぬ。「今日は500円でいいですよ。タピカオがないもんですから」とおにいさんは言う。もらったのがこのカレー。

カレーをご飯の上にかけるとさっそくばくばく食べる。舌の上ではほとんど辛さを感じないどころかほのかに甘いも思えるのだが、のどのほうというか口の奥のほうがひりひりするような不思議な辛さ。それとも私の舌が辛さに麻痺しているのか。

舌の上の甘さとひりひりのコンビネーションを感じながらあっというまに食べ終わる。肉のかけらのようなものが入っていたが、それは主眼ではないからいいだろう。さて、またこのカレーを食べたいか、と言われれば判断に迷う。明日は別のカレー屋が来てくれるかもしれぬ。屋台の順番とかってどんな仕組みになっているのかな。


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注釈