35章:PowerBook G4などとあれやこれやの問題はあったが、私はしばらくの間iBookと平和に暮らしていた。使い慣れてくるとやはり速度とかに不満がでてくる。これはどんなに早いマシンを使っていても必ずそうなる。どうしようかなあ。まずはメモリを増設してみようか。どうも頻繁にディスクアクセスしているような気がする。それが遅さの原因であるとすれば、メモリを増やすことで改善が図れる可能性があるのだ。
などとぼんやり考えているうちに日は過ぎていく。そのうち年に一度のお楽しみ、Mac World Expo @ San Fransiscoがやってきた。いつも全く当たらない下馬評によれば、今年のExpoは全く新製品の発表がないものになるはずであった。逆にうれしくない噂もあった。iTuneは無料のままだがそれ以外は有料になるという。これは困る。少し前から私は変なところを巡ってそれを文章にする、ということにこり出していた。このサイトを作った当初は
「写真をいれると重くなるからテキストオンリー」
というポリシーをもっていたはずなのだが、今やそんなことはすっかり忘れ、写真をべたべたとはりつけていたのである。
さて、そうやって頻繁にデジカメを持ち歩くようになると、それまで無視してたiPhotoというアプリケーションが実にうまくできていることに気がつく。こういうデジカメとパソコンの連携ソフトはいくつもあるよ、という人もいるだろうが、これほど簡単に使えるソフトが只でついてくる、というのは実にありがたい。だいたい私が使うような基本機能はボタン一つで使えるし、何よりも面倒な
「デジカメから写真を転送する」
という作業もほぼ自動に行われる。
この便利なソフトが有料になってしまうとなあ、、と思っているうちその日はやってきた。正確に言えば翌朝目覚めたところでネットにアクセスし情報をあさる。(こうした情報の取得にインターネットが与えた影響はどれほど大きいものだろうか。少し前だったら新しい雑誌の発表日まで待たされるところだった)すると事前の予想もなんとやら。誰も予想せず噂にすら上っていなかった12inch & 17 inchのPowerBook G4が発表されたのである。
私はそれをみてほほう、と思った。巨大な17inchはさっそく某掲示板で「まな板」という愛称をつけられれいたが、こちらは値段が高すぎどうやっても手がでない。しかし12inchのほうは別だ。発表時に会場の受けはいまいちだったというが、日本ではこちらのほうが受けるに決まっている。そのうちiBookとならべた写真などがサイトに掲載されだす。なんとiBookより一回り小さいではないか。クロックも867MHzだし。
とはいってもまだiBookをかって一年ちょっと。まだ買い換えるには早すぎる。私はただ心穏やかにそれらの新製品をみていた。まあ新製品には必ず問題がついてまわるから、一度マイナーバージョンアップしたころ、来年くらいに買い換えを考えようかなあなどとぼんやり考えながら。
などと平穏に日々がすぎていくと、この「私のMacintosh」を全く更新しなくなる。いや、もちろんその平穏な日々というのは実にすばらしいことである。そうしたこの世の真実に背を向け、サイトに書くネタとなるのであれば親不知が痛み出すこともパソコンのトラブルも喜びとするのは人間としていかがなものであろう。しかし私はその「人の道を踏み外した人間」になりかけていた。そして求めるものは与えられる。「サイトに書くネタ」が思いもしなかったところから現れたのである。
ある日会社からこんなお達しがだされた。
「会社から個人用のノートパソコンを”業務用”に貸与することとする。20万以内で希望の機種を申告すること」
この前には長々と文章がくっついており、やれ会社にいるばかりが能ではない。会社に長時間いるよりは、家で仕事をしたほうが効率があがることもあるだろう。そもそも我が社はフルフレックスである。従って家で働くためにはパソコンがいるでしょう云々。
能書きはともかく私は妙なところでもう一台ノートパソコンを手に入れるチャンスに巡り会ったのである。さて、何を買おう。最初は
「仕事に使えってんだからWIndowsだよなあ。いやだけど」
と考えていた。とはいってもなーんの個性もないマシンを買うことなど思いも寄らない。ソニーが出していたVAIO-Uとかいう怪しげなやつはどうであろう。なんとも小さく両手で持ったまま使える、というのが売りなそのマシンは「ちょっくら使ってみるか」と私のようなひねくれ者に考えさせるほど変わっていたのである。
さっそく調べてみると値段は20万円以下で問題ない。しかしソニーのオンラインショップでは「予定数を完売しました」と書いてある。製造中止になってしまったのだろうか。これでは買えない。。。ではどうしよう?ほかにおもしろいWindows機はないか、と思ったがどれもこれもにたようなものばかりだ。しょうがない。もう一台新しいiBookを買おうか。800MHzのもでてるし、最近このiBookバッテリのもちが悪くなってきたし。2台あれば何かあったときも安心だし。
ここでなぜ「もう一台iBookを」と考えるかといえば、PowerBook G4はどうやっても20万円を切らないと思っていたからだ。Apple Storeでは22万円くらいしていたと思う。これではなんともならない。
さて、iBookをどういう構成にしてやろう、と思ってあれこれ調べる。景気よくRAMを最大限につんでAirMacをつけて、、とやると20万を超えてしまうようだ。これは困った。もうちょっとやすいものを探さなくちゃ、と思いネットの情報をあれこれあさる。するとApple Storeよりもやすく売っている店というのは結構たくさんあることに気がついた。聞くところによるとそうした店の中には用心したほうがよいものも多いということなのだが、この際とにかく20万を切ってもらわないことには始まらない。
さて、どこで注文したものやら、と考えているうち、あることに気がついた。安売り店の値段リストを見ていればPowerBook G4が20万円以下になっているではないか。そのことに気がついた途端俄然G4購入に前向きになった。ちょっと前まで
「性能はG3@800MHzで十分。G4って消費電力大きいからなあ」
とか言っていたのはどこへやらである。しかも日々結構値段が下がる。これはデフォルトよりももっと大きなメモリをつんだモデルが買えるかもしれぬ。このまま価格が下がるとするとあと2週間ほどでここまで、、などと今から考えればとらぬ狸のなんとやら、と一生懸命やりだす。
さて、そうこうしているうちに仕事が火を噴き出す。まだ購入期限までには間があるから大丈夫と思ってしばらく価格のチェックをほったらかしにする。仕事が落ち着いたころには価格ももっと下がっているだろう。根拠のない楽観的な雰囲気に包まれ日々をすごす。
さて、やっかいな仕事が一つ片づき、さて、と久しぶりに価格をチェックして途端私の目は点になった。価格は下がるどころかあがっており、今や一番安いところでも20万を超えてしまっているのだ。ええい、なんということだ。変な欲を出している間に買えなくなってしまったではないか。
私は自分の愚かさを呪う。そうだよなあ、人間って馬鹿なものだよなあ。自分に都合がよい傾向は続くものだと勝手に思いこむのだよなあ、などと悟りを得たところで価格はいっこうに下がらない。ああ、もう一度あの20万を切る価格にお目にかかれないだろうか。購入の期限はあと3日のうちに迫ってくる。私は一縷の望みをたくしながらサイトにちょこちょこ訪れる。
ある日のことである。やっぱり今日もだめかなあ、、と思いサイトを訪問すると「特価品」がでていることに気がつく。値段をみると19万9000円だ。その瞬間私は電話機をつかむ。これを逃してはならない。
話は簡単についた。そして翌日地図をもって御徒町というところをうろうろする。卸の安売り店だから一階に店舗があるわけではなく、もちろん目立つ看板などない。しかし自分で取りに行く以外選択肢はないのだ。送ってもらうと送料が1000円かかる。それではちょうど20万円になってしまう。
探すことしばらくようやくそれらしいビルを発見。エレベーターに乗るのだがこれが二人乗るのがやっとというような小さなものだ。重い鉄のとびらをあけると事務室のようなところに人がいる。あの、予約していたものですが、、というと親切に応対してくれた。これで購入完了。夕暮れの町をPowerBook G4をかかえ会社に戻る。さてセットアップ、と言いたいところだがそれからほぼ一週間そのMacは放置されることになる。私の頭の上に別のやっかいごと(仕事上での)がふってきていたのであった。それが片づくまではセットアップなど思いも寄らない。
どんなに鬱陶しい仕事であっても時の流れというのはそしらぬ顔で公平にやってくる。結果がどうだろうととりあえず終わってしまえばセットアップをする余裕もでてくる。会社で必要なソフトをあれこれインストールすると「貸与品」という大きなシールを貼る。もちろん裏面にである。これで「自宅で仕事をする」準備ができたことになる。その日はもう遅かった(私にとっては)がiBookからのデータ移行を始める。今まで新しい機種にデータを移すときはLAN経由でやっていたが今回それをやったら丸一日かかりそうな情勢である。従ってFire Wireで2台を接続し、一台を「ターゲットモード」で立ち上げ、外付けハードディスクとして認識させる、というのをやってみた。なかなか快調に動く。1時間ほどですべてのデータを移し終わった。ちょこちょこさわってみるとちゃんと動いているようである。かくして、これまで働いてくれたiBookは机の上方においやられ、メインであるすぱるたかますにはPowerBook G4が鎮座することとなった。大きさはほとんど同じだから移行にはなんの問題もない。
というわけで使い始めてみると感想は二つ
・スピードが速いのって素敵
・バッテリの持ちはやっぱりよくない
であろうか。正直言えばあまり劇的な変化は感じないのである。ではiBookに戻すかと言えばそれはいやだ、と答える。従ってやはりご機嫌になってはいるのだろう。しかしすでに不吉な陰は存在していた。スピーカーからの音がとてもひずむのである。iBookを最初に買ったときの数々の問題が頭をよぎる。この程度なら我慢できるがはたしてこれだけで収まるものだろうか。