日付:2001/6/3
アインシュタインの等価原理アインシュタインが「我生涯最大のアイディア」と呼んだのは、球が同時に落ちるのが単なる偶然でないことを説明するものだった。つまりニュートンが導いた法則では別々の形で表される加速度運動の際に加えられる力と、重力は実は同じ物だというアイディアである。同じ力なのだから、それに関連する質量も等しくて当たり前。従ってガリレオは心安らかに眠れるというわけなのだが。
同じ力ということはどういうことか。万有引力というのは実は加速度運動の結果生じる力に他ならない。であるからして一つの物体に引力が働いている場合であってもうまく加速度を加えれば
「なーんにも力が働いていないんだよーん」
という状況を作れる、ということである。たとえばこうだ。幼い頃呼んだ「楽しい宇宙旅行」とかそういう本には
「宇宙飛行士は、無重量状態の訓練のため、急降下する飛行機に乗ります」
と書いてあった。あるいはもう少し大きくなり、エレベータに乗っているときこんな妄想を抱いたとはないだろうか。もし今綱が切れたらエレベータは自由落下を始める。数秒後には死が待っているかもしれない。しかしそれまでの間私は無重量状態を体験できるかもしれない。宇宙飛行士になることもなしにだ。これなら血圧が高くても大丈夫。
ここで何が起こっているか?この状態を「無重力状態」と呼ぶのは間違いだ、という議論をどこかで読んだことがある。何故間違いかと言えば、急降下する飛行機の中であろうが、綱が切れたエレベーターの中であろうが、重力はきちんと働いているからだ。ただ下向きに9.8m/sec2の加速度で移動する立場から観るとそれが観測されないだけなのである。従って「無重量」は正しい(はかりに何を乗せても0kgとなるからだ)が無重力ではない。ああややこしい。
さて、この話をもう少し細かく考えてみる。今「急降下する飛行機の中では重力は感じません」と言ったがこれは本当だろうか?
本当も何も実際おれは飛行機の中で人間がふわふわ浮いている映像を観たことがあるぞ、と言われれば「私も観たことがあります」と答えよう。しかし次のような極端な例を考えると解ると思う。すなわち地球の数倍も大きさがあるような飛行機が急降下(というか垂直に落下)する場合にも重力の影響は消し去ることができるものなのだろうか?
下の図のような状態を考えると、なんだかあやしくなってくる。飛行機ならぬ板は確かに地球に向かって9.8m/sec2で加速している。真ん中あたりの物体は確かに無重量になりそうだが、端の方はどうだろう?だいたいもともと引力の働いている方向は真下(板にとって)ではないし、この絵でも解るとおり地球からの距離も違うから引力の大きさも小さそうだ。
かくして次のような悟りを得ることになる。つまり加速度を持つ立場において引力をうち消したことができたように見えても、それはその場限りの話であると。つまり加速度を持っている立場では一様に力がかかるのだが、引力というのはどこでも一様にかかるわけではない。方向も変われば距離によって大きさもかわる。加速度運動によっていたるところで引力をうち消すことなど出来ない相談だ。
(執筆中)