日付:2002/9/1
三河三谷に降りたのが午後3時。ここは温泉街でもあるから、目的地を観たついでにここで泊まろうと考える。とはいっても駅前には何もない。温泉街はここからかなり歩いたところにあるらしい。またてくてく歩く。
元気な時だったらなんでもない距離なのかもしれないが、なかなか前に進まない。ここは以前車でなんども通った場所で、見慣れた光景もでてくるのだが、車では一瞬で移動できる距離も歩くといつまでもいつまでもかかる。そのうちようやく目的地らしき建物が見えてきた。これはGood Newsだ。しかしBad Newsも存在している。その建物は丘を登った上にあるのだ。
しかしここまできてめげていてもしょうがない。坂をひたすら上り出す。荷物はとても重く日は遠慮無く照りつけてくる。そのうち行く手になんたらホテルという看板が見えてくる。ようし。あそこまで行けば。もう何も考えずに泊まっちゃうぞ。泊まって涼しい部屋に荷物を置き、一息いれてそれから見に行けば良かろう。
そう思ってひたすら坂を上る。ホテルに近づくにつれある可能性が頭をよぎる。そして玄関を覗いた瞬間それは事実だということに気がついた。ここはもう閉鎖され廃墟とかしたホテルだったのだ。悔しいからとりあえず写真をとる。
しかしめげてはいられない。目標とする延命山大秘殿の看板は見えているが、まず泊まる場所を探し、荷物を置きたいという一念で頭はいっぱい。近くにホテルは、、と観ると確かにある。入り口とおぼしき方角に歩き始めた瞬間、またあることに気がついた。そもそも延命山大秘殿は今日営業しているのだろうか。今日は世間ではお盆と言われる時期である。まともな寺だったら忙しい時期かもしれないが、私が行こうとしているのはまともなお寺ではない。もし閉まっていたらここらへんの高そうな温泉ホテルに泊まるのは得策ではないかもしれない。
そう思うと大秘殿の入り口とおぼしき方向に向かう。すると建物が見えてくるのだが、それがいかにも安っぽい作りだ。
近づいてみると、私の予感はあたっていた。「定休日 水曜日」という看板がかかり、受付のシャッターは閉まったままである。ああ、なんということだ。今まで定休日を全く考えずにあちこち回っていたがここで「あたり」がでてしまったか。さて、どうしよう。そう考えるとどうもここらへんで泊まる気が失せてくる。いかにも温泉ホテルというそれらは、玄関のところに着物をきた女性がずらっとならんで頭を下げたりしており、「一人一泊泊めてください」と言えるような雰囲気ではない。しばし考えたあげく私は駅に戻り、別の場所にいくことにした。そしてやすーいやすいーいビジネスホテルにでも泊まろう。
そう思ってまた歩き出す。午前中のように「帰り道は気が楽」となってくれてもいいはずだ。なのに足取りは重い。肩は痛い。道を珍走団もどきが走っていく。しかし渋滞しているから歩くのと変わらない速度で走っている。なんだかほほえましい。見慣れた建物が見えてきた。もうすぐ駅につくはずだ。まだ歩き続ける。まだまだ歩く。ひたすら歩く。何かがおかしい、と気がついたのはだいぶたってからだ。いくらなんでもこんなに遠かったはずはない。線路に近づいてみて、はたして自分が駅のどちら側にいるのか確かめようとする。とはいっても何も見えない。しかし何の根拠もなく自分がいきすぎてしまったのだ、と信じ込んで今まで歩いてきたのと逆方向に歩き出す。しかし何もでてこない。可能性は二つ。私が想像以上に行きすぎてしまったか、あるいは目的とする駅はまだ彼方にあり、引き返した判断が間違いだった、というものだ。しかしまた逆方向に歩くなどというのはとうてい考えられることではない。もし間違っていたとしても、広い通りにでたらタクシーにのってしまおうなどと考える。
そのうち大きな「歓迎 三河三谷」などという看板が見えてきた。どうやら私の直感はあたっていたようだ。しかしべらぼうに行きすぎたもんだな。それともう一つ嬉しいニュースがあった。駅の裏になにやらチープなホテルが見えたことである。泊まるためには別の駅にいかなくちゃと思っていたがその必要もなさそうだ。
そのホテル-これがなんとも珍妙なところだったのだがそれはどうでもよい-に入ると服を全部脱いでシャワーを浴びる。一息ついたあとシャツを着ようとしてびっくりした。まるで水につけたようである。しかしこれで今日もなんとか泊まる場所が確保できた。明日の事は明日考えよう。
注記:2ヶ月の後私はここを再度訪れることになる。その模様はこちらを参照