日付:2004/2/11
1月末であるからして一年でもっとも寒い時期である。しかし今日は穏やかな日で日差しも暖かい。そんな休日私は一人で電車にのりひたすらよみうりランドを目指す。どうも「ランド」という言葉を聞くたび頭の中で「ラドン」と変換され、巨大な鳥がばっさばっさと羽ばたくのだがそんなことは関係ない。電車を乗り継ぎ。駅に降り立つ。200円でゴンドラがでているようだからそれに乗る。隣には「巨人への道」と書いた看板があり25分歩くこともできるようなのだが、まだ先は長い。
昔であれば平気の平左で乗ることができたゴンドラも年と共に高所恐怖症が悪化している私にとっては恐ろしい乗り物だ。ケーブルが切れ、窓から放り出され死亡した老夫婦の話があったなあと考え続ける。しかしそのうちその恐怖を忘れさせるようなものに遭遇した。
これが今日の目的地である。(ジェットコースターや観覧車じゃないよ)考えてみればよみうりランドに行くためこのゴンドラに乗る人は全てこの建物を目にしている筈だ。皆なんと思っているのだろう。しかしここだけのためによみうりランドに行く人間も少なかろうな。
というわけで私は「大人一枚。入場券のみ」といって券を買うことになる。中年男が一人だけでよみうりランドに来ました。さて目的は何でしょう?何か仕事で来ているのかあるいは家族においてけぼりを食って中で待ち合わせることになったのか、あるいは単に変人なのか。正解は最後のやつなのだが、そんなことはどうでもよい。入り口ゲートをくぐるとすぐある広場で最近の仮面ライダーがなにやらやっている。お姉さんが
「みんなー。今日のショウ楽しかった人、手をあげてー」
と言うと素直に「はーい」と手を挙げている。私もその昔ウルトラマンショーを観て、ステージの上で怪獣と踊ったり、怪獣とたたかったり(ブラコ星人とかいううんこのようなやつだ)としたのだが、今や興味は怪獣やら怪人やらの上にはないのだ。ステージには一瞥をくれただけで先を急ぐ。
道を曲がると正面にこんな門が見えてくる。
この先にはスタジアムのようなところがあるのだが、この門とどう関係あるのかわからない。なおも歩き続けるとだんだん道が細くなる。行き止まりか、という恐怖と戦うことしばらく。なんだか階段を延々のぼる羽目になる。ええい、珍スポットめぐりに階段はつきもの。しかし全く人気がないなあ。よみうりランドが繁盛しているか否か私にはわからないのだが、とにかくこの辺りに人はいない。
そのうち建物の側面のようなところを階段で上る。登り切ると視界が開け、いろんな物が並んで居ることがわかる。まず一番右にはお堂のようなものがあるのだが、そこにかかっている額がふるっている。
正力という名前は巨人軍と関連づけて何度か聞いたことがあるがどのような人かは知らない。とにかく国難打開とは最近聞かぬ言葉ではなかろうか。その先にも何かあるようなのだが、道がふさがれている。しばしうろうろして先に進むことができる道を見つけた。道をふさいでいたフェンスに看板が掛かっているのだが、不思議な事にそれは私がきた方向とは反対側を向いている。ということは私は知らぬうちに変な場所に迷い込んでいたということか。この像には「敗戦から立ち上がる日本 JAPAN ARISING FROM DEFEAT」という題名がつけられているが作られた時代を感じるなあ。
さて先ほどのお堂の先には「江戸城」と書いた建物があり、中にはその名の通り江戸城の模型がある。
うむ。確かに江戸城だ。それはいいとして何故ここにこんなものがあるのか。室内にかかっていた看板を読めば書いてあったのかもしれないが失念した。なぜなら外にはもっと興味深いものが並んでいたからである。
インカ帝国の国宝たって、インカ帝国が制定した国宝ってわけじゃないだろうし、もしそうならこんなところにあっていい気もしない。オウムさんはなんでも「ドイツ共和国連邦政府と読売新聞社共同で開催された「ドイツ科学展を記念して」」送られたらしい。しかしガラスケースに入れ野ざらしってのはあまりみたことがない展示の仕方だ。
その近くにあ昭和天皇がよみうりランドにいらした際に詠んだ歌の石碑やらなんだかよくわからない巨大な彫刻(というか塔)がある。読売巨人軍の選手が優勝を誓った「誓いの泉」なんてのもある。当時はこれがギャグでなく成立していたのだなあ。今だったら
「メジャー挑戦の誓い」
とか
「代理人交渉で年俸倍増の誓い」
とかになるのではなかろうか。そういえば当時は「巨人の星」を皆(含む私)が真面目に観ていたのだ。
などと考えるネタはつきない。ああ、このエリアは立派に珍スポットとして成立しているではないか。メジャー(少なくとも運営母体は)テーマパークに潜むこの妙さ加減。私はご機嫌になり先を急ぐ。すると看板に「聖地ゾーン」とか書いてある。その先には立派な門が有り、狛犬もいる。
その先には(説明を信じれば)少なくとも重要文化財が二体ある建物が存在している。重文をこんなところにひっそり置いておいてよいものなのだろうか。などと考えながら歩いているとさっきゴンドラから観たとき「なんか銅像がならんでるな」と思っていた場所にでた。
その道について何にもしらない私でも知っている偉大な方の像がずらりとならんでいる。いや、これが普通のお寺にでも存在していればなんていうことはないのだろうけど、ここはテーマパークのはずだ。と思ったそばから藤原氏寄贈の多宝塔が出てくる。もう少しいくと「よみうりランド社務所」のおみくじもある。
この場所は「読売」という名にどこかつきまとう変なイメージに呼応しているのかもしれぬ。と考えたところで「観るべきほどの物は観つ」ということで出口に向かう。昔はこの近くに出口&ゴンドラの駅があったようだが、今はなくなっている。相変わらず誰がどちらから来るのを阻止しようとしているのかわからない柵を一つ越え、外に出るとまたゴンドラに乗る。上からみたあのエリアはやっぱり奇妙なのだが。