日付:2004/2/28
というわけで弁天洞窟をいったん後にし、また駅の方に戻る。とはいってもありがた山とはどこにあるのだ。地図を観るとなにやら曲がって道沿いに歩いていくようだがその道はどこだ、、ときょろきょろしながら歩くことしばらく。先ほど「墓地分譲中」の登りを出していた妙覚寺のすぐ脇に道がある。ここを行ってみるか。
てくてく歩くとなにやら墓地が見えてきた。
どうやらここらしい。しばらくは新築というか新しい墓の間を歩き続ける。山肌を登っていくのでだんだん暑くなる。脱いだりいろいろしたりしながら歩き続ける。
ところどころ古い墓石も混じっているようだが、そんなにものすごいところでもないなあ、と思いながら歩くうちに前方に何か灰色のエリアが見えてきた。近づいてそれが何であるかを知る。
山頂までびっしりと墓石が並べられている。あるサイトによれば
「ある宗教団体が昭和15年から18年にかけて都内駒込あたりの寺院にあった無縁仏を集め祀ったもの。」
とのことなのだが、「ある宗教団体」とはなんなのだろう。中央に崩れかかった階段のようなエリアがあり、その左側に四角い墓石、右側には像が彫られたものが集められている。
静かな空気の中ただ膨大な数の墓石が並んでいる。真ん中の通路を通るのは気が引けるため脇にある階段を上る。途中に祠のようなものがある。観ればそこに人の気配が。白髪の女性が少し前屈みになって座っているのだ。
あの人は何をしているのか?私は瞬間凍り付いた。少し離れたところからは、赤ん坊でも抱いて話しかけているように見える。いならぶ墓石と赤ん坊に話しかける女性。心は硬直しながらも足は止まらない。
近寄ってその女性が何をしているかが判明した。携帯電話を使ってメールでも打っているらしい。ああ、IT革命は素敵だ。私は「こんにちわ」と挨拶するとその女性も「こんにちわ」と言ってくれた。あらためて墓石群を見渡す。
あたりには説明があるわけでもなくただ墓石がびっしりと並んでいる。いったいいくつあるのだろう。
階段をのぼりきり山頂から墓石群を見下ろす。遠くの方には明るい市街地の風景が広がり、そして手前には墓石が日に照らされている。そのコントラストはどこか異様。そしてあたりは只静かなのだった。