日付:2005/5/16
群馬は遠い。
朝の6時過ぎに家を出てバスにのり東横線にのり渋谷へ。JRに乗り大宮で乗り換え高崎に着いたのが10時。しかしここから乗る上信電鉄のホームには「次の電車は10:31」とかいう文字が大きく光っている。やれやれ。
私が住んでいるのは神奈川県。従って群馬に行くには東京都と埼玉県を縦断するわけだから遠いと言えば遠いのだが、しかし時間がかかる。間もなく到着した電車に乗り込むとかたこんとゆられる。30分ほどで上州福島という駅に着いた。なんとここはもう福島なのであるか。あるいは単にそういう名前なのか。
さて、ここからは歩きだ。甘楽町商工会のサイトには「上州福島駅下車2km」と書いてある。まあ30分くらいならいいだろうと適当に見当をつけた方向に歩き出す。そのうち甘楽町に関連すると思われる名前が散見されるようになり安心する。こちらでいいようだ。
さて、最初は何の変哲もない通りだったのだが、町役場、上信越自動車道をくぐり抜けたあたりから様子が変わり、町並みの古さが感じられるようになった。とはいってもここにはるばる横浜から来るのは私だけであろうと思っていたら結構年配の夫婦連れとおぼしき観光客が歩いている。私が知らないだけで結構な観光スポットなのかもしれない。
そのうち「歴史民族資料館」と銘打たれた煉瓦造りの建物が見えてきた。そこに何人かが座っており地図が置いてある。私は「これいただきます」といって地図を取ったが、そこにいる人たちは別に反応しない。さて、と地図を観ると今日の目的地を確認する。どうもかなり奥にあるようだ。
気合いを入れ直して歩き出す。そのうち右手に野球のグランドが見えてきた。誰もいない。こんなに天気がいいのにもったいない、と思うのは発想がせこいのだろうか。まだまだ歩く。そのうち「織田宗家七代の墓」という文字がみえてくる。ここもなんとなく観たいが、とりあえず目的地を観て時間が余ったらにしよう。とはいってもそろそろ目的地に着いてもいいはずだが。
地図を再度確認する。この道よりも右手に存在している筈だからどこかで方向を変えなくては。少し右にはいってみる。車がいなくなったぶんだけ歩きやすくはなったが目的地はいずれとも知れない。そのうちようやく「長厳寺」と書かれた何かが見えてきた。
やれうれしや、と思った物のそのお寺はどこなのだ。あちこち見回すとはるか右手にそれらしき屋根が見える。あちらに行こう、と歩き出すと川にぶつかった。しかたがないから道を戻り、はるか遠回りして川を渡る。てくてく歩いていくと小さな公園のようなものがあり、子供が二人ばかり遊んでいる。ここがちがったら泣くぞ、と思って近づけばこんな看板がある。
かなり痛んでおり読むことはできないが、とにかくここの寺の後ろに摩崖仏があるらしいことは解る。やれうれしや、と左手に進んでいくとこんなものがある。
天狗岩なのだそうな。わーい大きな岩だ、って私はこんなものを観るために一都一県を縦断したのではない。とはいってもこの方向には何もないようだ。一旦引き返し今度は本堂の右手に向かう。すると登りの階段がある。
結構な登りである。時計を観れば既に12時。駅についたのが11時だからたっぷり一時間あるいたことになる。ううむ。甘楽町まで2km、そしてその中をさらに2km歩いたのか。足は疲れておりその上に偉大な体重がどっかり乗っている。そうですね。珍スポット巡りの為には体重を減らさなければいけない、と何度も決意したんでしたっけね。ぜいはあ、とか登り続けるとそのうち前方から声がする。どうも母親が子供と何かしゃべっているらしいのだが、両者の距離は結構離れており何をいっているかわからない。そのうち前方にちらっとそれらしいものが見えた。やれ、うれしや。ここで「違うっす」と言われてもどこにも登り直す気力はない。
ぜえぜえといいながらそのうちこんな物が見えてきた。
これだこれ、と歩を進めれば前方に巨大なお顔が。
これが本日の目的地である。あるサイトによれば「縦10m、横8m。S54年から6年かけて彫刻素人の故吉田文作氏が完成させた」とある。それ以上のことは何もわからない。ここに来れば何が書いてあるかと思ったのだが、それらしきものは何もない。
珍スポットを巡っているとそれらがいくつかの特徴を共有していることに気がつく。中でも私が一番親近感を抱くのは「突如目覚めたオヤジが一人で作ちゃった系」のスポットである。この吉田文作氏はどんな人だったのか。何故突然ここに6年もかけて仏顔を彫ろうとしたのか。よく観ればお顔の左側にチェーンがある。あれを彫るときに使ったのかあるいは誰かがお顔をお近くで拝見するためのものだろうか。
あたりを見回せば同じ作者によるものと想像されるいくつかの像がある。
最後の等たぶん龍だと思うがどこかゴジラの顔にも見える。
よくよく観ると仏の下に小さな観音?が二つ彫られているがこれはたぶんに玄人が彫ったとおぼしき出来だ。誰かの助けがあったのだろうか。
そのうちこの場所にはやたら虫が多いことに気がつく。手で払っていたがそれではとてもおいつかない。というわけで退散する。降りてくれば、すぐ裏には廃車置き場があり、墓地と奇妙な隣人関係を作っている。
さて帰り道だ。緩い下り坂だし、一度来た道は最初に来たときよりずっと短く感じる物だがそれでも遠い。車道には結構車が連なっている。ここには「こいのぼりの里」と称し、この時期たくさんのこいのぼりが泳ぐ場所があるという。みんなそこに行くのかななどと考えながら歩き続ける。やっとのことで駅にたどり着けば電車は出たばかりで次は40分後だ。やれやれ。そのとき駅に無料貸し自転車があったことを知る。ううむ。これを借りればよかった、と思っても後の祭り。
おまけ:草むらのなかに立つ像群