題名:巡り巡って

五郎の入り口に戻る

日付:2005/5/10


熱海城:静岡県(2005/5/1)

新横浜からこだまにのるとあっという間に熱海に着いてしまった。以前ここに珍スポット巡りに来たのはいつのことだったか。あの時は徒歩で目的地まで行ったがよくもこんな距離を歩いたな。今日はバスに乗っているから楽である。

終点の後楽園というところで降りる。さて、ロープウェーだ。往復券と言うと相手が何か言う。聞き取れないから何度か繰り返してもらっているうち

「秘宝館はいかがですか?」

と言っていることがわかった。あそこにもう一度行こうという気は起きない。もらったチケットの中には熱海城100円割引券もついていた。駅で熱海城の入場券を買い、100円割引だーと喜んでいたのだが、このロープウェーを使う限りどのみち100円は安くなったということか。

人はたくさんいるが、よく聞いてみると韓国語やら他の国の言葉が混じっている。確かに私が海外に住んだとして、暇があればここに来る気にもなるかもしれぬ。しかしそうした人ばかりではなく日本語をしゃべっている若いカップルも相当いる。最近若い人の間で熱海巡りがブームになっている、とかいうことはあるまいな。

さてロープウェーを降りると階段を上る。秘宝館の前を素通りし、更に坂を登る。

するとそのうち堂々たる熱海城の姿が見えてきた。

なかなか立派である。近づいて説明を読めば、この場所には戦国武将も城を構えたいと思いながら果たせなかったと。でもって昭和34年開業だそうな。戦国が終わって何百年たってから城たててどうする、と思うがあまり気にしない。見上げればここが観光を目的とした建造物であることが解る構造が存在している。

戦国大名は城にスピーカー用の取り付け場所を設けようとは思わなかっただろうな。

さっそく中に入る。チケット売りのおばさんは同じ台詞を繰り返している。一回を観て頂いた後でエレベーターで六階まであがってください。3階以外は観られますから。私の前の人の説明を聞いていたから十分解っているのだが私にも全く同じ説明を繰り返す。その前にはいきなりこんなのがいる。

最近名古屋城の鯱が下ろされて触れるようになっていたのことだが、熱海城の金鯱は日本一とのこと。それはいいとして

「かわしい「金鯱」と一緒に記念撮影をどうぞ!」

という呼びかけにどう答えればいいのだろうか。

さて言われたとおり一階を回ってみる。あまりおもしろいものはないが、入り口近くにあるこれだけは面白かった。

御者がロボットになっており手が動く。しかしどう考えても無理がある方向に手が曲がるのであった。

エレベーターで6階にあがる。すると展望台になっており眺望がすばらしい。そのうち隣にある建物に気がつく。

石垣があるが、ここは何だったのだろう。首をひねりながら階を降りる。すると日本美術がどうのこうのなのだが、絵が数枚飾ってあるだけ。やたらと狭い。その下の階には世界遺産の写真が飾ってある。ここも狭い。この「世界遺産」というのにはなんだかどこでも登録されている。最初は貴重なものと思わせておいて、実は世界中の観光協会から金をまきあげる陰謀だったのではなかろうか、と考えているうち階を降りる。言われたとおり3階はシャッターが閉まっており何もない。そのうち

「ひょっとするとここは正面から見ると立派だがとても薄い建物なのではないか」という強迫観念に襲われる。しかし2階はひろびろとしていた。ここには日本のお城に関するなんたらか飾ってある。日本全国お城マップがあるのだが、そこに乗っているのは本物のお城だからこの熱海城ははいらないのであった。マッチ棒で作ったお城というのがあり、マッチ棒を強調するため瓦部分のマッチには頭がついたままになっている。

というわけで2階はおしまい。一階はさっき観たからどうでもよい。私は軽い失望感を味わっていた。これでは特筆すべきものが少なすぎるではないか。しかしまだそう考えるには早すぎた。

地下一階には「空想の美術館」なるものがあり、数ある名画の複製品(結構色あせている)が飾ってある。しかしそれよりも面白いのは「古代ローマの廃墟」だ。何故ローマの建築物を復元せず、廃墟を「復元」したのだろうか。

どちらかと言えばなんだか壊れた物を並べただけ、という気もするが、中央にある太い柱までかじったようにしてあるところが「廃墟」たるゆえんか。

反対側の壁にもなにやら絵があり、破れたような紙までつけてある。

この先には春画を展示してあるエリアがある。若いカップルが二人ほどてれてれと観ている。ある女性は男性に向かい「なんだかこのエリアだけはうれしそうね」とか言っている。

といったところで熱海城はおしまい。表に出て先ほど見えた廃墟の方に向かう。どうやらその一部はアンティークドールの博物館となっているようだが、この建物は以前なにに使われていたのだろう。

そのうちふと気がつく。このエリアの入り口にいくつか像が並んでいるのだ。

今や草に埋もれかけたそれらは何のためにそこにおかれたのか。推察するにこの廃墟はある程度真面目な信仰関連の施設だったのか。そうでなければ天上天下唯我独尊のこの人を置きはしまい。

首をひねりながらロープウェーを降りバスで熱海駅に向かう。この途中で食べた「玄米カップカレー」については「カレーの道」参照の事。

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注釈