日付:2005/8/20
雨の中いきなり石像の群れが現れる。さて、どこからみたものやら。道沿いにはなにやら変な像があると思えば、それは十二支を形にしたものなのであった。
その向こうに平坦なエリアがあるようだが、そこは既に草に隠れた池となっている。しかしここまで来て何を迷おう。意を決するとじゃぶじゃぶと進む。集団お見合い状態になった像たちの間を進むのはなんとなくへんな気分だ。
一体一体顔を見ていく。年老いたもの有り、若い者有り。一枚の写真を元にしたであろうそのできはなかなか見事なものだが、どうしても限界というものある。眼鏡を掛けた人が何人かいるのだが、やはり枠しかつくることはできないのであった。
おまけに元となった写真を撮られたタイミングによってはお食事中になってしまうのであった。
こ ちらも例によって順路というかきちっとした区画などは存在していない。足下に気を付けながら歩き続ける。先ほどの場所で転んで頭を打てば菩薩の仲間入りだ が、ここでこければ、石像の仲間入りである。ふとデーモン木暮の「お前も蝋人形にしてやる!」という声が聞こえたような気がする。しかしそうした不思議な 感慨にとらわれたのはこの時だけだった。
多くの像は台座に名前が彫り込まれている。しかしその文字はカタナカだったり漢字だった り。あるいは名前の一部としか思えないものだったり。推測するにこれは古河氏がその人をなんと呼んでいるかということなのではなかろうか。例えばこちらの 羊に座った女性の台座には「ウオノミ」と書いてある。
私が気が付いた範囲ではこの人の他にもう一人ひつじに腰掛けた女性がいた。ライオンに腰掛けた女性もいるのだが、こちらは「人馬」とも迫力に満ちている。
先 ほどの場所と同じく夏草が生い茂り視界を遮っている。もうおしまいかと思うとまだまだ像が出てくる。先ほどの男性の話では460(70?)体ほどあるとの こと。また一角には羅漢様も300体いる。先ほどの場所に500体おり、合わせて800羅漢なのだそうな。石仏の里にもまだ空きエリアはあったように思う のだがなぜこうして分割配置しているのかはわからない。
羅漢のエリア脇に廃棄された車が一台あった。この車は何に使われたものだったなどと考えながらゆっくりと歩く。足下には石が敷かれているのだが、ところどころ崩れかかっている。そのうち羅漢と同じで「持ち物」に注目することとした。以下いくつか面白いと思った物を示す。
これはやっぱり麻雀牌ですか。役万記念とか。ロン、大三元。
背広に猟銃
土建屋さん。運転手さん。うちでの小槌屋さん
私が気づいた中では唯一の立像
ふと振り返ればこんな光景が広がっている。
雨の中に座り続ける像たち(一つの立像を除いて)からは不思議な事に感じても良いはずの狂気-石手寺や神秘珍々ニコニコ園で感じたような-を少しも感じない。とあるサイトにはここの設立経緯について詳しい情報が載っている。その記述を信じるとすれば(疑う理由は今のところ全くないが)ここは古河氏が作りたいから作った場所とのこと。いわば「中年おやじが思い立っていきなり作っちゃった系」の場所なのだが、感じるのは穏やかな幸福感だ。
あ あ、すばらしいなあ。自分が作りたいから作りたい物を作る。別に宣伝はしないが見に来たい人はどうぞご自由に見に来て下さい。無料の休憩所もありますよ。 すばらしい。これこそ中年男の浪漫ではなかろうか。古河氏は一代で富を築きこれほどの場所を作る。それほど稼ぐ才覚もなければハナから努力もしない人間が 作ることができるのは怪しげなフリーウェアの類か。
そんなことを考えているうちに靴の中は全面浸水状態。もうこうなってしまうとどれだけ濡れても同じ事なのだがそろそろおいとましよう。最後に像の真ん中に立ちあたりを見回す。
途中で気が付いたのだが、ここからだと360度とぎれることなく視界の中に石像が存在して居るではないか。石像の真ん中で珍スポットへの愛を叫ぶ。わおーん。
こ こから観て「最前列」にある像が一番新しいようだ。黒い汚れがないせいか顔つきがおだやかに見える。また他の像は椅子のようなものに座っていたのだが最新 作はごつごつしたものの上に座っている。その為名前を彫るエリアがなくなってしまったように思えるのだが、私の見落としだっただろうか。あと例の看板の裏 はこんなんでした。
背中が見えてるのはライオンおばさん
帰 り道は様子が分かっているから短い、というのはいつものことだが今日はいつもと勝手が違っていた。私は頭上から毛虫が降ってくることに異常な恐怖感を抱く 男である。そしてこの道には毛虫がいそう(と私が勝手に思っている)木がたくさん茂っている。行きは雨に視界を遮られとにかく前に進むことしか考えていな かったら気にもしなかった。今や雨は小康状態、道の様子は判明したと言うことで余計な事に神経が回ってしまう。恐怖に駆られながら足早にそこをくぐり抜け る。
よれよれ歩き続け、駅のベンチに座りほっと一息。時計を観て驚く。時刻表によればここに到着したのが11時頃。帰りの電車は 15:18分だからどう考えても時間がやたらと余るだろう、とあれこれ暇つぶし用品を持ってきていたのだが、電車が来るまで30分ほど。歩いていた時間は さほど長くないから、私は随分長い間あそこに居たことになる。トイレに行ってふと鏡を見れば自分の顔がなんだか白く足下には名前が、なんてことはもちろん ないのだった。